葬祭費と確定申告・医療費控除の併用完全ガイド【2025年最新版】税理士が教える節税術

突然の訃報で混乱の中、税金のことまで考えられない…そんなあなたへ

愛する方を失った悲しみの中で、葬儀の準備に追われる日々。そんな時に「税金のことも考えなければ…」と思うのは当然のことです。多くのご遺族が、葬祭費の支給申請や確定申告での医療費控除について「何をどうすればいいのか分からない」「併用できるのかどうか不安」と感じています。

この記事を読むことで得られるメリット

• 葬祭費支給制度の正しい申請方法と受給条件が分かる
• 確定申告での医療費控除の適用範囲と計算方法を理解できる
• 葬祭費と医療費控除の併用可否と最適な節税方法が明確になる
• 申請漏れや計算ミスを防ぐチェックリストが手に入る
• 税務署への相談タイミングや必要書類が分かる

葬祭費支給制度の全体像とカテゴリー分析

葬祭費支給制度の基本構造

葬祭費支給制度は、故人が加入していた公的医療保険制度によって支給される給付金です。この制度は大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。

国民健康保険の葬祭費

• 支給額：3万円～10万円（市区町村により異なる）
• 申請期限：葬儀から2年以内
• 申請者：葬儀を行った方（喪主または実際に費用負担した方）

健康保険の埋葬料・埋葬費

• 埋葬料：5万円（被保険者本人の場合）
• 埋葬費：5万円を上限として実際にかかった費用
• 申請期限：死亡日から2年以内
• 申請者：被扶養者または埋葬を行った方

共済組合の葬祭費

• 支給額：5万円～27万円（組合により異なる）
• 申請期限：死亡日から2年以内
• 申請者：組合員の遺族または葬儀を行った方

【専門家の視点】申請時の注意点

葬儀ディレクターとして20年以上の経験を持つ立場から、多くのご遺族が見落としがちなポイントをお伝えします。

1. 複数の保険制度に加入していた場合 故人が複数の保険制度に加入していても、支給されるのは一つの制度からのみです。最も支給額の多い制度を選択することが重要です。
2. 申請期限の管理 2年という期限は長いように感じますが、葬儀後の手続きに追われる中で忘れがちです。葬儀から1ヶ月以内の申請を目標にすることをお勧めします。
3. 必要書類の準備 住民票除票、死亡診断書（死体検案書）のコピー、葬儀費用の領収書など、事前に準備できる書類は早めに用意しておきましょう。

確定申告における医療費控除の深掘り解説

医療費控除の基本的な仕組み

医療費控除は、1年間（1月1日から12月31日）に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税の計算において所得から差し引ける制度です。

控除額の計算方法

医療費控除額 = 実際に支払った医療費の合計額 - 保険金等で補てんされる金額 - 10万円（または総所得金額等の5%のいずれか少ない方）

控除対象となる医療費の範囲

対象となる医療費	具体例	注意点
診療・治療費	病院での診察料、手術費、入院費	健康診断費用は原則対象外
医薬品購入費	処方薬、市販薬（治療用）	予防目的やビタミン剤は対象外
通院費	電車代、バス代、タクシー代（必要な場合）	自家用車のガソリン代は対象外
介護費用	介護保険サービスの自己負担分	対象サービスに制限あり
その他	歯科矯正（必要な場合）、眼鏡（治療用）	美容目的は対象外

【専門家の視点】医療費控除でよくある勘違い

税理士として多くの確定申告をサポートしてきた経験から、特に注意が必要なポイントをご説明します。

1. 葬儀費用は医療費控除の対象外 多くの方が誤解されますが、葬儀費用は医療費控除の対象になりません。ただし、故人の生前の医療費は控除対象となります。

2. 死亡後の医療費控除の取り扱い 故人の死亡年分の医療費控除は、相続人が準確定申告で行うことができます。この場合、故人が1月1日から死亡日までに支払った医療費が対象となります。

3. セルフメディケーション税制との選択 年間の医療費が10万円に満たない場合でも、対象となる市販薬の購入費が12,000円を超えれば「セルフメディケーション税制」の適用を受けられる場合があります。ただし、医療費控除との併用はできないため、どちらが有利か計算して選択する必要があります。

葬祭費と医療費控除の併用可否と最適活用法

併用の基本ルール

結論：葬祭費と医療費控除は併用可能です

これは多くの方が疑問に思う点ですが、葬祭費の支給と医療費控除の適用は、それぞれ異なる制度であるため併用に問題はありません。

併用時の計算例

故人Aさんのケース（年収500万円の会社員の配偶者）

• 故人の生前医療費：年間15万円
• 葬祭費支給額：5万円（健康保険から）
• その他の医療費：家族分で年間8万円

医療費控除の計算：
(15万円 + 8万円) - 0円 - 10万円 = 13万円

※葬祭費5万円は医療費の補てんではないため、控除額から差し引く必要なし

【深掘り解説】節税効果の最大化戦略

1. 申告のタイミング戦略

申告時期	メリット	デメリット	おすすめ度
2月16日～3月15日（通常期間）	税務署での相談可能	混雑により時間がかかる	★★★
1月～2月15日（還付申告）	混雑回避、早期還付	相談窓口が限定的	★★★★★
e-Tax利用	24時間申告可能、早期還付	システム操作に慣れが必要	★★★★

2. 家族内での医療費集約戦略

医療費控除は、生計を一にする家族分をまとめて申告できます。最も所得税率の高い方（通常は所得の多い方）が申告することで、節税効果が最大化されます。

所得税率別の節税効果例

• 課税所得195万円以下：控除額 × 5% = 節税額
• 課税所得195万円超330万円以下：控除額 × 10% = 節税額
• 課税所得330万円超695万円以下：控除額 × 20% = 節税額

3. 住民税への影響も考慮

医療費控除は住民税（税率10%）にも影響します。所得税の還付に加えて、翌年度の住民税も軽減されるため、トータルでの節税効果を把握することが重要です。

【実践】申請手続きの完全ガイド

葬祭費申請の具体的手順

STEP 1: 申請先の確認

故人の加入していた保険制度により申請先が異なります。

保険制度	申請先	確認方法
国民健康保険	市区町村の国保担当課	保険証の発行者を確認
健康保険（協会けんぽ）	年金事務所または協会けんぽ支部	保険証の保険者番号で確認
健康保険（組合管掌）	各健康保険組合	保険証記載の組合名で確認
共済組合	各共済組合	組合員証で確認

STEP 2: 必要書類の準備

共通して必要な書類

• 葬祭費支給申請書（各保険者指定の様式）
• 故人の保険証
• 申請者の本人確認書類
• 申請者の振込先口座情報
• 死亡を証明する書類（住民票除票、死亡診断書写し等）
• 葬儀を行ったことを証明する書類（葬儀費用の領収書、会葬礼状等）

STEP 3: 申請書の記入と提出

申請書記入時の注意点

• 故人の氏名、生年月日、保険証番号を正確に記入
• 申請者（喪主）の情報を詳細に記載
• 葬儀年月日、葬儀場所を正確に記入
• 振込先口座は申請者名義のものを使用

医療費控除申請の具体的手順

STEP 1: 医療費の集計

年間の医療費を以下の項目別に整理します。

1. 故人の医療費
   • 入院費、手術費
   • 外来診療費
   • 処方薬代
   • 通院交通費
2. 家族の医療費
   • 配偶者の医療費
   • 扶養親族の医療費
   • その他生計を一にする親族の医療費

STEP 2: 必要書類の準備

書類名	入手先	注意点
医療費控除の明細書	国税庁HP、税務署	令和元年分以降は領収書の添付不要
確定申告書	国税庁HP、税務署	AまたはBを選択
医療費の領収書	各医療機関	5年間保存義務あり
医療費通知書	健康保険組合等	あれば明細書の記入を簡略化可能
源泉徴収票	勤務先	給与所得者の場合

STEP 3: 確定申告書の作成と提出

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用することで、画面の指示に従って正確な申告書を作成できます。

【深掘り解説】よくある失敗事例とトラブル回避術

失敗事例1：申請期限の見落とし

実際のケース 「故人の葬儀から2年半後に葬祭費の存在を知ったが、既に申請期限を過ぎていた」

回避策

• 葬儀後1ヶ月以内に各種手続きのチェックリストを作成
• 自治体や勤務先の担当者に制度の説明を求める
• 家族や親族間で情報を共有し、申請漏れを防ぐ

失敗事例2：医療費控除の計算ミス

実際のケース 「葬祭費5万円を医療費から差し引いて計算し、本来より少ない控除額で申告してしまった」

回避策

• 葬祭費は医療費の補てんではないことを理解
• 医療費控除の計算式を正確に把握
• 不明な点は税務署や税理士に相談

失敗事例3：必要書類の紛失

実際のケース 「医療費の領収書を整理せず紛失し、正確な医療費控除額を計算できなかった」

回避策

• 医療費の領収書は月別・医療機関別に整理
• 通院交通費は家計簿や手帳に記録
• デジタル化してバックアップを作成

失敗事例4：準確定申告の手続き漏れ

実際のケース 「故人の最終年分の確定申告（準確定申告）を行わず、医療費控除を受けられなかった」

回避策

• 故人の死亡後4ヶ月以内に準確定申告を実施
• 故人の所得状況と医療費を正確に把握
• 相続人間で申告内容を事前協議

失敗事例5：重複申請によるトラブル

実際のケース 「故人が複数の保険制度に加入していたため、複数の制度から葬祭費を申請してしまった」

回避策

• 故人の保険加入状況を正確に把握
• 最も支給額の多い制度を選択
• 申請前に各制度の担当者に相談

【専門家が教える】節税効果を最大化する年間計画

生前からの準備戦略

1. 医療費の記録管理

• 年初から医療費の家計簿を作成
• レシートや領収書の整理方法を家族で統一
• 通院記録と交通費の管理システム構築

2. 保険制度の把握

• 家族全員の加入保険制度を一覧化
• 葬祭費の支給条件と金額を事前確認
• 申請方法と必要書類を事前準備

3. 税制改正への対応

• 医療費控除の制度変更を年次確認
• セルフメディケーション税制の活用検討
• ふるさと納税等他の控除制度との併用検討

故人の死亡年における最適化戦略

1. 医療費の最終集計

• 故人の1月1日から死亡日までの医療費
• 家族全体の年間医療費
• 保険金等による補てん額の確認

2. 申告方法の選択

• 準確定申告での医療費控除
• 生存配偶者の確定申告での合算
• どちらが有利かの比較検討

3. 翌年以降の計画

• 残された家族の医療費控除戦略
• 相続税との関連性検討
• 長期的な節税計画の策定

制度利用のステップバイステップガイド

Phase 1: 事前準備期（葬儀前～葬儀直後）

1. 保険制度の確認（葬儀前）

• 故人の保険証の確認
• 加入制度の特定
• 連絡先の確認

2. 必要書類の準備（葬儀直後）

• 死亡診断書の取得
• 住民票除票の請求
• 葬儀費用領収書の保管

3. 申請先への連絡（葬儀から1週間以内）

• 申請方法の確認
• 必要書類の最終確認
• 申請書の取得

Phase 2: 申請期（葬儀から1ヶ月以内）

1. 葬祭費の申請

• 申請書の記入
• 必要書類の添付
• 申請書の提出

2. 医療費の整理

• 故人の医療費集計
• 家族の医療費集計
• 領収書の整理

3. 申請状況の確認

• 申請受理の確認
• 支給予定日の確認
• 不備があれば速やかに対応

Phase 3: 確定申告期（翌年1月～3月）

1. 準確定申告の検討

• 故人の所得状況確認
• 医療費控除の効果算定
• 申告の要否判断

2. 通常の確定申告

• 年間医療費の最終集計
• 葬祭費の受給確認
• 申告書の作成

3. 申告後のフォロー

• 還付金の受取確認
• 住民税への影響確認
• 来年度以降の計画策定

あなたの状況別おすすめ戦略

パターン1：高額医療費が発生したケース

特徴

• 故人の年間医療費が50万円以上
• 家族全体でも相当な医療費負担
• 所得税率が比較的高い

おすすめ戦略

1. 準確定申告での医療費控除を積極活用
2. 家族分も含めた医療費の合算検討
3. 所得の多い方での申告選択
4. 住民税への影響も含めた総合的な節税効果を追求

期待できる節税効果

• 所得税：数万円～十数万円の還付
• 住民税：翌年度分の軽減
• 総合効果：医療費負担の実質的な軽減

パターン2：一般的な医療費負担のケース

特徴

• 故人の年間医療費が10万円～30万円程度
• 家族全体では医療費控除の適用範囲
• 中程度の所得水準

おすすめ戦略

1. 葬祭費の確実な申請
2. 医療費控除とセルフメディケーション税制の比較検討
3. 通院交通費等の漏れない計上
4. 5年間の領収書保存による税務調査対応

期待できる節税効果

• 所得税：数千円～数万円の還付
• 住民税：相応の軽減効果
• 総合効果：制度を知らない場合との差額

パターン3：医療費負担が少ないケース

特徴

• 故人の医療費が年間5万円程度
• 家族全体でも10万円未満
• 比較的若い世代

おすすめ戦略

1. 葬祭費申請に重点を置く
2. セルフメディケーション税制の検討
3. 将来に向けた医療費管理体制の構築
4. 他の控除制度との組み合わせ検討

期待できる節税効果

• 葬祭費：3万円～10万円の支給
• 所得税：限定的な還付
• 総合効果：制度の理解と将来への備え

パターン4：複雑な家族構成のケース

特徴

• 複数世帯での生計維持
• 介護費用等の特殊な医療費
• 相続関係が複雑

おすすめ戦略

1. 専門家（税理士等）への相談
2. 家族間での申告方法の最適化
3. 介護費用等の控除対象可否の精査
4. 相続税との関連性も含めた総合的な税務戦略

期待できる節税効果

• 所得税：専門的な計算による最適化
• 相続税：関連控除の活用
• 総合効果：専門知識による効果最大化

よくある質問（Q&A）

Q1: 葬儀費用の一部を医療費控除に含めることはできませんか？

A1: 葬儀費用は医療費控除の対象外です。ただし、故人の生前に支払った医療費（入院費、手術費、薬代等）は控除対象となります。また、死亡後に請求された故人の医療費も、その年分の医療費控除として申告可能です。

Q2: 葬祭費を受け取ると、医療費控除額から差し引く必要がありますか？

A2: 必要ありません。葬祭費は医療費に対する補てん金ではないため、医療費控除の計算において差し引く必要はありません。両制度は独立して利用できます。

Q3: 故人の準確定申告と家族の確定申告、どちらで医療費控除を申告すべきですか？

A3: 所得税率の高い方で申告することが一般的に有利です。ただし、故人の所得状況、家族の所得状況、医療費の発生時期等を総合的に判断する必要があります。複雑な場合は税理士にご相談することをお勧めします。

Q4: 申請期限を過ぎてしまった場合、救済措置はありますか？

A4: 葬祭費の申請期限（2年）を過ぎた場合、原則として支給を受けることはできません。ただし、特別な事情がある場合は、一度申請先に相談してみることをお勧めします。医療費控除については、確定申告期限後でも5年間は更正の請求が可能です。

Q5: 複数の保険制度に加入していた場合、すべてから葬祭費を受け取れますか？

A5: 葬祭費は一つの制度からのみ支給されます。複数の制度に加入していた場合は、最も支給額の多い制度を選択することが一般的です。重複申請は返還義務が生じる可能性があるため注意が必要です。

Q6: 医療費控除の対象となる「通院交通費」の範囲を教えてください。

A6: 電車代、バス代は原則として控除対象です。タクシー代は、緊急時や他の交通手段がない場合に限り対象となります。自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外です。領収書がない場合は、家計簿等に記録を残しておくことが重要です。

Q7: セルフメディケーション税制と医療費控除はどちらが有利ですか？

A7: 年間の医療費総額が10万円を超える場合は医療費控除、10万円未満でも対象市販薬の購入が12,000円を超える場合はセルフメディケーション税制が有利な場合があります。両制度は選択制のため、事前に計算して有利な方を選択してください。

Q8: 介護保険サービスの自己負担分は医療費控除の対象になりますか？

A8: 対象となるサービスと対象外のサービスがあります。訪問看護、訪問リハビリテーション等の医療系サービスは対象ですが、食事の配達、掃除等の生活援助サービスは対象外です。領収書に医療費控除対象額が記載されている場合があります。

Q9: 高額療養費を受け取った場合、医療費控除への影響はありますか？

A9: 高額療養費で補てんされた金額は、医療費の総額から差し引く必要があります。ただし、特定の医療費を補てんする目的の給付金は、その医療費からのみ差し引き、他の医療費から差し引く必要はありません。

Q10: 確定申告をe-Taxで行う場合の注意点を教えてください。

A10: e-Taxを利用する場合、医療費の領収書の添付は不要ですが、5年間の保存義務があります。また、マイナンバーカードまたは税務署で発行されるID・パスワードが必要です。24時間利用可能で還付も早いため、慣れれば非常に便利な方法です。

まとめ：故人への最後の贈り物として、適切な手続きを

愛する方を失った悲しみの中で、様々な手続きを行うことは心身ともに負担が大きいものです。しかし、葬祭費の申請や医療費控除の適用は、故人が生前に支払った保険料や税金を考えれば、当然の権利として受けるべき給付・控除です。

重要なポイントの再確認

1. 葬祭費と医療費控除は併用可能で、それぞれ独立した制度として活用できます
2. 申請期限の管理が最も重要で、葬祭費は2年、医療費控除は5年の期限があります
3. 準確定申告により、故人の最終年分の医療費控除も可能です
4. 所得の高い方での申告により、節税効果を最大化できます
5. 専門家への相談により、複雑なケースでも最適な対応が可能です

これらの制度を適切に活用することで、経済的負担を軽減し、故人への最後の贈り物として心を込めた手続きを行うことができます。不明な点があれば、遠慮せずに税務署や専門家にご相談ください。故人の安らかな眠りとご遺族の皆様の心の平安を心よりお祈り申し上げます。