【専門家が解説】四十九日までに行うべき手続きの全知識|ご遺族のためのチェックリスト付


はじめに:大切な方を亡くされたご遺族の皆様へ

この度は、心よりお悔やみ申し上げます。

大切な方を亡くされ、深い悲しみの中にいらっしゃることと存じます。故人様を偲ぶいとまもないほど、次々と訪れる手続きの数々。何から手をつければ良いのか、誰に相談すれば良いのか、不安なお気持ちでいらっしゃる方も少なくないでしょう。

私たち「TERASU by 玉泉院」は、長年にわたり大切な方とのお別れに寄り添い続けてまいりました。その中で、多くのご遺族が葬儀後の手続きに大変なご負担を感じていらっしゃるのを目の当たりにしてきました。

この記事では、その経験をもとに、四十九日を迎えるまでに必要となる手続きの全体像から、一つひとつの具体的な進め方、そして多くの方が悩まれるポイントまで、丁寧に解説いたします。

この記事を読むことで、「何を」「いつまでに」「どのように進めればよいか」が明確になり、皆様の心の負担を少しでも和らげることができればと願っております。そして、故人様と静かに向き合い、心ゆくまでお偲びする時間を取り戻すための一助となれば幸いです。

ご無理なさらず、ご自身のペースで少しずつ読み進めてください。

まずは全体像を把握しましょう:四十九日までの手続きカレンダーとチェックリスト

葬儀後の手続きは多岐にわたり、期限が設けられているものも少なくありません。まずは全体像を把握し、落ち着いて一つひとつ進めていきましょう。印刷して使えるチェックリストとしてもご活用ください。

期限別:手続きカレンダー

期限主な手続き
逝去後すぐ・死亡診断書(死体検案書)の受け取り ・ライフライン(電気・ガス・水道など)の連絡
7日以内・死亡届の提出 ・火葬許可申請書の提出
10日または14日以内・年金受給停止の手続き ・介護保険資格喪失届の提出 ・住民票の抹消と世帯主の変更届
四十九日まで・四十九日法要の準備 ・香典返しの手配 ・遺言書の有無の確認
3ヶ月以内・相続放棄または限定承認の申述
4ヶ月以内・故人の所得税の準確定申告・納税
10ヶ月以内・相続税の申告・納税
1年以内・遺留分侵害額請求
2年以内・葬祭費・埋葬料の請求 ・高額療養費の請求
5年以内・遺族年金の請求

葬儀後の手続き チェックリスト

【公的な手続き】

  • [ ] 死亡届・火葬許可申請書の提出
  • [ ] 年金受給権者死亡届の提出
  • [ ] 介護保険資格喪失届の提出
  • [ ] 住民票の抹消届・世帯主変更届の提出
  • [ ] 国民健康保険資格喪失届の提出
  • [ ] 葬祭費・埋葬料の請求
  • [ ] 高額療養費の請求

【法要・納骨の準備】

  • [ ] 四十九日法要の日程・場所の決定
  • [ ] 菩提寺への連絡
  • [ ] 案内状の送付
  • [ ] 会食・返礼品の手配
  • [ ] 本位牌の準備
  • [ ] お墓・納骨の準備

【相続に関する手続き】

  • [ ] 遺言書の有無の確認
  • [ ] 相続人の調査・確定
  • [ ] 相続財産の調査(預貯金、不動産、有価証券、借金など)
  • [ ] 遺産分割協議
  • [ ] 相続放棄・限定承認の検討(期限:3ヶ月以内)
  • [ ] 故人の所得税の準確定申告(期限:4ヶ月以内)

【各種名義変更・解約】

  • [ ] 預貯金口座
  • [ ] 不動産
  • [ ] 自動車
  • [ ] 公共料金(電気・ガス・水道・電話)
  • [ ] 携帯電話・インターネット
  • [ ] クレジットカード・各種会員サービス
  • [ ] 運転免許証・パスポートの返納

【逝去後7日以内】まず最初に行うべき手続き

悲しみも癒えぬ中ですが、速やかに行うべき手続きがあります。ご家族で分担しながら進められるとよろしいでしょう。

【結論】死亡届を提出し、火葬許可証を受け取ります

故人様を火葬・埋葬するために、法的に不可欠な手続きです。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 戸籍の死亡記録を届け出ることで、火葬(埋葬)の許可が得られます。この許可なく火葬を行うことは法律で禁じられています。
  • 手続きの期限
    • 死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3ヶ月以内)
  • 手続きをする場所
    • 故人の本籍地
    • 届出人の所在地
    • 死亡した場所
    • 上記のいずれかの市区町村役場
  • 必要なものリスト
    • 死亡届(医師が作成した死亡診断書または死体検案書と一体になっています)
    • 届出人の印鑑(認印で可。スタンプ印は不可の場合があります)
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 多くの場合、葬儀社が提出を代行してくれます。ご自身で提出される場合は、市区町村役場の閉庁後でも「夜間・休日受付窓口」で受け付けてもらえます。事前に役所のウェブサイトで確認しておくと安心です。
    • 死亡届を提出すると、原本は返却されません。その後の年金や保険の手続きで死亡診断書のコピーが必要になる場合があるため、提出前に必ず複数枚コピーを取っておきましょう。

出典情報

  • 法務省: 死亡届
    • https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILY/S5-4.html

【逝去後14日以内】健康保険・年金などの公的手続き

故人様が加入されていた制度に応じて、資格を喪失する手続きや、ご遺族が受け取れる給付金の申請を行います。

【結論】年金事務所または年金相談センターで年金の受給を停止します

故人様が年金を受給されていた場合、速やかに受給停止の手続きが必要です。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 手続きが遅れ、故人様の死亡後に年金が振り込まれてしまうと「過払い」となり、後日返還を求められることになります。
  • 手続きの期限
    • 厚生年金:死亡後10日以内
    • 国民年金:死亡後14日以内
  • 手続きをする場所
    • 最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
  • 必要なものリスト
    • 年金受給権者死亡届(「未支給年金・未支払給付金請求書」と一体になっています)
    • 故人の年金証書
    • 故人の死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則として「年金受給権者死亡届」を省略できます。
    • 故人様がまだ受け取っていない年金(未支給年金)がある場合、生計を同じくしていたご遺族が受け取れる可能性があります。同時に請求手続きを行いましょう。
    • ご遺族の状況によっては、遺族年金を受け取れる場合があります。こちらも併せて相談されることをお勧めします。

出典情報

  • 日本年金機構: 年金を受けている方が亡くなられたとき
    • https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/20140725.html

【結論】市区町村役場で健康保険・介護保険の資格喪失手続きを行います

故人様が加入されていた健康保険の種類によって、手続き先や必要書類が異なります。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 資格喪失の手続きをしないと、保険料の請求が続いてしまう可能性があります。また、保険証を返却する必要があります。
  • 手続きの期限
    • 死亡後14日以内
  • 手続きをする場所と必要なもの
    • 国民健康保険・後期高齢者医療制度の場合
      • 場所:市区町村役場
      • 必要なもの:資格喪失届、故人の保険証、死亡を証明する書類など
    • 会社の健康保険(組合健保、協会けんぽなど)の場合
      • 場所:故人の勤務先または健康保険組合
      • 必要なもの:勤務先の指示に従ってください。
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 故人様が世帯主で国民健康保険に加入していた場合、同じ世帯の家族も加入者情報の変更手続きが必要になります。
    • 手続きを行うことで、葬祭費(国民健康保険・後期高齢者医療制度)や埋葬料(会社の健康保険)が支給される場合があります。忘れずに申請しましょう。(申請期限は2年です)
    • 介護保険も同様に、市区町村役場で資格喪失の手続きと保険証の返却が必要です。

出典情報

  • (お住まいの市区町村のウェブサイトをご参照ください。例:千代田区 国民健康保険に加入している方が死亡したときの手続き)
    • https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/kokuho/kanyu/shibo.html

【結論】必要に応じて世帯主の変更届を提出します

故人様が世帯主だった場合、14日以内に新しい世帯主を届け出る必要があります。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 行政からの通知などが正しく届くようにするため、住民票の情報を正確に保つ必要があります。
  • 手続きの期限
    • 死亡後14日以内
  • 手続きをする場所
    • 市区町村役場
  • 必要なものリスト
    • 住民異動届
    • 届出人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
    • 届出人の印鑑
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 残された世帯員が1人だけの場合や、新しい世帯主が明確な場合(例:夫が亡くなり妻がなる)は、手続きが不要なこともあります。判断に迷う場合は、役所の窓口で相談しましょう。

出典情報

  • (お住まいの市区町村のウェブサイトをご参照ください。例:渋谷区 住民票の世帯主変更届)
    • https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/koseki/juminhyo/setainushi_henko.html

【四十九日までに】法要の準備と相続の第一歩

公的な手続きと並行して、四十九日法要の準備と、今後の相続に向けた準備を少しずつ進めていきます。

【結論】四十九日法要の日程を決め、関係者へ連絡します

四十九日は、故人様の魂の行き先が決まる大切な日とされています。ご家族や親しい方々で集い、ご供養を営みます。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 仏教において重要な節目である四十九日に法要を営み、故人様の冥福を祈るためです。親族が集まる大切な機会でもあります。
  • 準備の流れ
    1. 日程と場所の決定:本来は命日から49日目ですが、参列者の都合を考え、直前の土日に行うのが一般的です。場所は、お寺、ご自宅、斎場などが考えられます。
    2. 菩提寺への連絡:僧侶に読経を依頼します。早めに連絡し、日程を調整しましょう。
    3. 案内状の送付:日時、場所が決まったら、参列してほしい方へ案内状を送ります。
    4. 会食(お斎)の手配:法要後に会食の席を設ける場合は、お店や仕出し弁当の予約をします。
    5. 返礼品(引き出物)の準備:参列いただいた方へのお礼の品を用意します。
    6. 本位牌の準備:葬儀の際に使用した白木位牌から、魂を移すための本位牌を仏壇店などに依頼します。完成までに時間がかかる場合があるため、早めに手配しましょう。
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 何をどこまで行うかは、地域の慣習やご家庭の状況によって様々です。ご親族や菩提寺とよく相談しながら進めることが大切です。
    • 納骨を四十九日法要と同時に行うことも多いです。お墓の準備が整っていない場合は、いつまでにどうするかを考えておく必要があります。(内部リンク:お墓の準備について)

【結論】相続の準備として、まず遺言書の有無を確認します

相続手続きは、遺言書の有無によって進め方が大きく異なります。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 故人様の遺志を尊重し、後の相続トラブルを避けるために、相続手続きの最も重要な第一歩となります。
  • 遺言書の探し方
    • 自筆証書遺言:ご自宅の仏壇、金庫、書斎の机の引き出しなど、故人様が大切に保管しそうな場所を探します。貸金庫に保管されている可能性もあります。
    • 公正証書遺言:原本が公証役場に保管されています。お近くの公証役場で、故人様が遺言書を作成したかどうかの照会をすることができます。
  • 必要なものリスト(公正証書遺言の照会)
    • 故人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍謄本)
    • 照会者と故人との関係がわかる戸籍謄本
    • 照会者の本人確認書類と印鑑
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 自筆証書遺言を見つけた場合、絶対にその場で開封してはいけません。 家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。封を開けてしまうと、内容が無効になるわけではありませんが、過料を科される可能性があります。
    • 法務局で保管されている自筆証書遺言(遺言書保管制度を利用)の場合は、検認は不要です。

出典情報

  • 裁判所: 遺言書の検認
    • https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
  • 日本公証人連合会: 遺言の検索
    • https://www.koshonin.gr.jp/search

【期限に注意】四十九日以降の重要な手続き

四十九日を過ぎても、期限が定められた重要な手続きが続きます。特に相続に関する手続きは専門的な知識が必要になるため、早めに専門家へ相談することも視野に入れましょう。

【結論】相続財産を調査し、相続放棄・限定承認を検討します(3ヶ月以内)

相続は、プラスの財産(預貯金、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金、ローンなど)も引き継ぐことになります。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 故人様に多額の借金がある場合など、相続しない方が良いケースがあります。その場合、家庭裁判所で手続きをすることで、相続の権利を放棄できます。
  • 手続きの期限
    • 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
  • 選択肢
    • 単純承認:すべての財産を無条件で相続する(手続きは不要)。
    • 相続放棄:すべての財産を相続しない。
    • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する。
  • 手続きをする場所
    • 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 3ヶ月の期限は非常に重要です。 この期間を過ぎると、原則として単純承認したとみなされ、借金もすべて引き継ぐことになります。
    • 財産調査には時間がかかる場合があります。借金の有無がすぐに分からない場合は、まず弁護士や司法書士などの専門家に相談し、期限の延長(伸長)を申し立てることも検討しましょう。

出典情報

  • 裁判所: 相続の放棄の申述
    • https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

【結論】所得税の準確定申告と納税を行います(4ヶ月以内)

故人様が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、確定申告と納税を行う手続きです。

  • この手続きはなぜ必要か
    • 故人様に代わって、相続人が所得税の申告・納税義務を果たすためです。
  • 手続きの期限
    • 相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内
  • 対象となる方
    • 故人様が事業所得や不動産所得があった方、年間の給与収入が2,000万円を超えていた方など、生前に確定申告が必要だった方。
  • 手続きをする場所
    • 故人の死亡当時の納税地を所管する税務署
  • 編集部からのアドバイス(つまずきやすいポイント)
    • 準確定申告を行うことで、医療費控除や社会保険料控除などが適用され、源泉徴収されていた税金が還付されるケースもあります。
    • 申告が必要かどうかの判断や、書類の作成は複雑な場合があります。ご不明な点は、税務署や税理士にご相談ください。

出典情報

  • 国税庁: No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
    • https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm

ご遺族自身の心を大切に

ここまで、多くの手続きについて解説してまいりました。しかし、何よりも大切なのは、ご遺族である皆様ご自身の心と体です。

深い悲しみの中で、慣れない手続きに追われる日々は、心身ともに大きな負担となります。

  • 完璧を目指さなくて大丈夫です
    • すべてを一人で抱え込む必要はありません。ご家族や親族と分担したり、時には専門家の力を借りたりしながら、少しずつ進めていきましょう。
  • ご自身の時間も大切にしてください
    • 故人様との思い出に浸ったり、何もせずに心を休めたりする時間も必要です。どうぞご自身を責めないでください。
  • 誰かに話すことも助けになります
    • ご友人や、同じような経験をされた方、あるいは専門のカウンセラーなど、信頼できる誰かに今の気持ちを話すだけでも、心が少し軽くなるかもしれません。

私たちは、手続きのサポートだけでなく、ご遺族の心に寄り添うことも大切な役割だと考えております。何かお困りのこと、ご不安なことがございましたら、いつでも「玉泉院」にご相談ください。

皆様が滞りなく日常に戻れるよう、そして、故人様との穏やかな時間を取り戻せるよう、私たちが全力でサポートいたします。