この度は、大切な方との突然のお別れに、心よりお悔やみ申し上げます。
深い悲しみの中、お通夜の準備を進めなければならないご心痛は、いかばかりかと拝察いたします。
「お通夜には、どのような服装で伺えばよいのだろうか」
「故人様に失礼のないように、きちんとしたい」
突然のことで、何から確認すればよいのか、不安なお気持ちでいらっしゃるかもしれません。
この記事では、長年にわたり多くのご遺族様に寄り添い続けてきた私たち「TERASU by 玉泉院」が、お通夜の服装に関する全ての疑問に、一つひとつ丁寧にお答えします。
この記事を最後までお読みいただくことで、男性、女性、お子様の服装はもちろん、急な弔問や季節ごとの注意点まで、お通夜の服装に関する不安が解消され、落ち着いて故人様とのお別れの時間を過ごせるよう、心を込めて解説いたします。
どうぞ、ご無理なさらず、ご自身のペースで読み進めてください。
【結論】お通夜の服装は「略喪服(平服)」が基本です
お通夜は、親しい方々が故人様と最後の夜を過ごすための大切な儀式です。本来、急な知らせを受けて駆けつける場であるため、**「平服(ひらふく)」や「略喪服(りゃくもうふく)」**で伺うのがマナーとされています。
「平服」とは、普段着のことではなく、**「控えめな服装」**を指します。具体的には、ダークカラーのスーツやワンピースなどがこれにあたります。
| 立場 | 服装の種類 | 具体例 |
| ご遺族・親族 | 準喪服 | モーニングコート(昼)、ブラックスーツ、ブラックフォーマル |
| 一般の参列者 | 略喪服(平服) | ダークスーツ、ダークカラーのワンピースやアンサンブル |
ただし、近年ではお通夜と告別式の両方に参列する方が増えたことから、一般の参列者も準喪服(いわゆる「喪服」)を着用することが多くなっています。
【ポイント】
- 急な知らせの場合: 無理に喪服を用意する必要はありません。ダークスーツなど、手持ちの控えめな服装で駆けつけても失礼にはあたりません。故人を悼む気持ちが最も大切です。
- お通夜から参列する場合: 可能であれば、準喪服を着用するとより丁寧な印象になります。
次の章から、男性、女性、お子様、それぞれの具体的な服装について、イラストや写真も交えながら詳しく解説していきます。
【男性の服装】光沢のないダークスーツに白いシャツ、黒無地の小物を合わせます
男性の服装は、黒や濃紺、チャコールグレーなどのダークスーツが基本です。故人様への敬意を表すため、光沢のある素材や派手なデザインは避けるように心がけましょう。
スーツ:基本はダークカラーの無地を選びましょう
- 色: 黒、濃紺、チャコールグレーなど、暗い色のものを選びます。黒が最も望ましいですが、なければ濃紺やチャコールグレーでも問題ありません。
- 柄: 無地が基本です。織り柄のストライプなど、遠目には無地に見えるものであれば許容範囲とされています。
- 形: シングル、ダブルのどちらでも構いません。パンツの裾はシングルが正式です。
多くのご遺族に寄り添ってきたからこそわかる視点
急な訃報で駆けつける場合、ビジネススーツで参列される方もいらっしゃいます。その際は、できるだけ暗い色のスーツを選び、後述するネクタイや靴下を黒に変えるだけでも、弔意を示すことができます。会社から直接向かう場合などは、コンビニエンスストアや駅の売店で黒のネクタイや靴下が販売されていることもありますので、落ち着いてご確認ください。
ワイシャツ:白無地のレギュラーカラーが基本です
- 色・柄: 清潔感のある白無地を選びます。色柄物やボタンダウンのシャツは避けましょう。
- 形: 最もフォーマルなレギュラーカラーが望ましいです。
ネクタイ:光沢のない黒無地をしっかりと結びます
- 色・柄: 光沢のない黒無地一択です。お悔やみの場にふさわしいものを選びましょう。
- 結び方: シンプルな結び方(プレーンノットなど)で、結び目にくぼみ(ディンプル)は作らないのがマナーです。
靴:金具のない黒い革靴を選びましょう
- 種類: 黒い革靴が基本です。デザインは、紐で結ぶタイプの内羽根式ストレートチップが最もフォーマルとされていますが、プレーントゥでも問題ありません。
- 避けるべき靴: ローファーなどのスリッポン、金具や装飾のある靴、エナメルなどの光沢のある素材の靴は避けましょう。
靴下:黒の無地を選び、肌が見えないようにします
- 色・柄: 黒の無地を選びます。ワンポイントの柄なども避けた方が無難です。
- 長さ: 座ったときに素肌が見えない、長めの丈のものを選びましょう。
その他の小物:結婚指輪以外は外すのが基本です
- カフスボタン、ネクタイピン: 光り物とみなされるため、外します。
- 腕時計: 着用する場合は、シンプルなデザインのものを選び、派手なものは外しましょう。
- バッグ: 基本的に男性はバッグを持ちませんが、必要な場合は黒無地でシンプルなクラッチバッグなどがよいでしょう。
- コート: 冬場にコートを着用する場合は、黒や濃紺、グレーなどのダークカラーで、シンプルなデザインのものを選びます。会場に入る前に脱ぐのがマナーです。
【女性の服装】肌の露出を抑えたブラックフォーマルやダークカラーの服装を心がけます
女性の服装は、黒のフォーマルなワンピースやアンサンブル、スーツが基本です。男性同様、光沢のある素材や体のラインが出すぎるデザインは避け、上品で控えめな装いを心がけましょう。
洋装:ブラックフォーマルまたはダークカラーのワンピース、アンサンブルを選びます
- 色: 黒が基本です。急な知らせで駆けつける場合は、濃紺やチャコールグレーなどの控えめな色でも構いません。
- デザイン:
- 肌の露出を抑えることが大切です。襟元が詰まったデザインで、袖は長袖か七分袖、スカート丈は膝下からふくらはぎ丈が基本です。
- 体のラインが出すぎない、ゆったりとしたシルエットのものを選びましょう。
- ワンピース、アンサンブル、スーツのいずれでも構いませんが、パンツスーツも着用可能です。ただし、格式を重んじる場ではスカートが無難とされる場合もあります。
多くのご遺族に寄り添ってきたからこそわかる視点
夏場は特に服装に悩まれる方が多くいらっしゃいます。暑い時期であっても、肌の露出は避けるのがマナーです。七分袖のワンピースや、夏用のブラックフォーマルを選ぶとよいでしょう。また、会場は冷房が効いていることも多いので、薄手のジャケットやカーディガンなど、羽織るものを一枚お持ちになると安心です。
ストッキング:黒の薄手のものを着用します
- 色・厚さ: 黒色が基本です。厚さは20~30デニール程度の、肌がうっすらと透けるものが正式とされています。厚手のタイツはカジュアルな印象になるため避けましょう。
- 注意点: 伝線してしまったときのために、予備をバッグに入れておくと安心です。
靴:光沢のない黒いパンプスを選びます
- 種類: 装飾のない、黒い布製か革製のシンプルなパンプスが基本です。
- ヒールの高さ: 3~5cm程度の太めのヒールが安定感もあり、疲れにくいためおすすめです。ピンヒールやウェッジソールは避けましょう。
- つま先の形: ラウンドトゥやスクエアトゥが一般的です。オープントゥはマナー違反となります。
バッグ:小さめで光沢のない黒い布製のものが基本です
- 素材・色: 光沢のない黒い布製のものが最もフォーマルです。殺生を連想させる革製のバッグは避けた方がよいとされていますが、近年では光沢や飾りのないシンプルなものであれば許容される傾向にあります。
- 大きさ・形: 小さめのハンドバッグが基本です。荷物が多い場合は、黒いシンプルなサブバッグを用意しましょう。
- 避けるべきもの: 金具が目立つもの、ブランドのロゴが大きく入っているもの、爬虫類系の型押しなどは避けましょう。
アクセサリー:結婚指輪と一連のパールのみ着用できます
- 基本: 結婚指輪以外のアクセサリーは外すのがマナーです。
- 許されるもの: 「涙の象徴」とされるパール(真珠)のアクセサリーは、唯一着用が許されています。
- ネックレス: 白か黒の一連のもの。二連、三連のものは「不幸が重なる」ことを連想させるため、必ず避けてください。
- イヤリング・ピアス: 一粒タイプの揺れないデザインのものを選びます。
- 注意点: パールのアクセサリーも、必ず着けなければならないわけではありません。迷った場合は、何も着けない方が無難です。
髪型・メイク:清潔感を第一に、控えめにまとめます
- 髪型:
- 髪が長い場合は、耳より下の位置で一つにまとめます。お辞儀をした際に髪が顔にかからないよう、清潔感を意識しましょう。
- ヘアアクセサリーを使用する場合は、黒無地で飾りのないシンプルなもの(ゴム、シュシュ、バレッタなど)を選びます。
- メイク:
- 「片化粧(かたげしょう)」と呼ばれる、控えめでナチュラルなメイクが基本です。
- ノーメイクはかえって失礼にあたる場合がありますので、最低限の身だしなみとして整えましょう。
- ラメやパール感の強いアイシャドウ、チーク、口紅は避けます。口紅はベージュ系など、自然な色のものを選び、グロスは控えましょう。
- マニキュアは落とすのが基本です。難しい場合は、上から塗れる弔事用のネイルコンシーラーや、手袋の着用を検討しましょう。
【子供・学生の服装】学校の制服が正装です。ない場合はモノトーンの服装を選びます
お子様や学生の方の服装は、通っている学校の制服が最もふさわしい正装となります。制服がない場合は、大人に準じた控えめな服装を心がけましょう。
乳幼児・未就学児:黒や紺などの地味な色の服装をさせましょう
- 制服がない小さなお子様の場合は、黒、紺、グレー、白といった、モノトーンを基調とした服装を選びます。
- 男の子であれば、白いシャツに黒や紺のズボン、女の子であれば、白いブラウスに黒や紺のスカートやワンピースなどがよいでしょう。
- キャラクターものや派手なデザインの服は避けます。
- 靴は、黒や紺のスニーカーやローファーなど、手持ちのもので構いません。靴下も白や黒、紺など控えめな色を選びましょう。
小学生・中学生・高校生:制服があれば、それを着用します
- 学校の制服が正式な礼服となります。着崩したりせず、校則に従ってきちんと着用しましょう。
- 靴や靴下も、学校指定のものがあればそれを履きます。指定がない場合は、黒の靴と、白・黒・紺の無地の靴下を合わせます。
- 制服がない場合は、白いシャツやブラウスに、黒や紺のズボン、スカートを合わせるなど、清潔感のある控えめな服装を心がけましょう。
ご遺族への配慮
小さなお子様を連れて参列される際は、ぐずったり騒いだりしてしまうこともあるかと存じます。万が一のために、途中で退出できる出入口に近い席を選ぶなどの配も慮されると、ご自身も少し気持ちが楽になるかもしれません。お子様が故人様を悼む気持ちもまた、尊いものです。あまり堅苦しく考えすぎず、お子様の様子を見ながら参列しましょう。
【状況別】急な弔問や季節ごとの服装のポイント
急な知らせを受けたり、季節によって服装に悩んだりすることもあるかと存じます。ここでは、状況に応じた服装のポイントを解説します。
急な知らせで駆けつける場合:「平服」で構いません
- 服装: 訃報は突然訪れるものです。仕事先などから直接駆けつける場合は、喪服でなくても失礼にはあたりません。黒や紺、グレーといったダークカラーの地味な服装であれば問題ありません。
- 大切なこと: 何よりも、いち早く駆けつけ、故人を悼む気持ちを伝えることが大切です。服装の準備ができないことを気にして、お通夜への参列をためらう必要は全くありません。
- ご遺族への一言: もし服装が気になるようであれば、受付などで「平服で失礼いたします」と一言添えると、より丁寧な印象になります。
夏(6月~8月)の服装:暑さ対策とマナーの両立を
- 基本: 夏場であっても、肌の露出を抑えるという基本マナーは変わりません。
- 男性: ジャケットは着用するのがマナーです。会場までは上着を脱いでおき、会場に入る直前に羽織るようにしましょう。半袖のワイシャツは避け、長袖を選びます。
- 女性: 七分袖や五分袖のワンピースやアンサンブルがおすすめです。夏用のブラックフォーマルも販売されています。ノースリーブの場合は、必ずジャケットやボレロなどを羽織りましょう。ストッキングも必ず着用します。
冬(12月~2月)の服装:防寒対策は会場に入る前まで
- コート・アウター: 黒や濃紺、グレーなどのダークカラーで、シンプルなデザインのものを選びます。ダウンジャケットや毛皮、革製品は殺生を連想させるため避けるのがマナーです。
- マナー: コートやマフラー、手袋などの防寒具は、会場の建物に入る前に脱ぐのがマナーです。脱いだコートは裏地が見えないようにたたみ、腕にかけて持ちます。
- 女性: 厚手のタイツはカジュアルな印象を与えるため避け、黒のストッキングを着用します。寒さが厳しい場合は、パンツスーツを選んだり、肌色のストッキングと黒のストッキングを重ね履きしたりするなどの工夫をされるとよいでしょう。
【持ち物チェックリスト】数珠、香典、袱紗(ふくさ)を忘れずに
お通夜に参列する際の持ち物も、事前に確認しておくと安心です。
| 持ち物 | ポイント |
| 数珠(じゅず) | ・仏式の葬儀では持参するのがマナーです。 ・ご自身の宗派のものがあればそれを使います。なければどの宗派でも使える略式の数珠を用意しましょう。 ・貸し借りはしないのが基本です。 ・移動中は房を下にして左手で持ちます。 |
| 香典 | ・不祝儀袋に入れ、表書きや氏名を薄墨で書くのが正式です。(薄墨には「悲しみの涙で墨が薄まった」という意味合いがあります) ・新札は避け、やむを得ない場合は一度折り目を付けてから入れます。 ・金額は故人との関係性によって異なります。 ・香典のマナーについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。(※内部リンク想定) |
| 袱紗(ふくさ) | ・香典をむき出しで持参するのはマナー違反です。必ず袱紗に包んで持参しましょう。 ・弔事では、紫、紺、深緑、グレーなどの寒色系の袱紗を使用します。 ・受付で袱紗から香典を出し、袱紗をたたんでからお渡しします。 |
| ハンカチ | ・白か黒の無地のものを用意します。色柄物やタオル地のハンカ-チは避けましょう。 |
| その他 | ・スマートフォン、財布、鍵などの手荷物 ・(女性の場合)予備のストッキング、化粧直しの道具 ・(必要な方)筆記用具、メガネなど |
お通夜の服装に関するよくあるご質問(Q&A)
ここでは、お通夜の服装に関して、多くの方が疑問に思われる点にお答えします。
Q1. 「平服でお越しください」と案内があった場合は、どんな服装をすればいいですか?
A1. この場合の「平服」とは、「普段着」ではなく**「略喪服」**を指します。つまり、「喪服でなくても構いませんが、節度ある控えめな服装でいらしてください」という意味合いです。男性であればダークスーツ、女性であればダークカラーのワンピースやアンサンブルなどを着用します。本当に普段着で参列してしまうと、かえって失礼にあたる場合がありますので注意しましょう。
Q2. 喪服はどこで買えますか?また、レンタルは可能ですか?
A2. 喪服は、デパートのフォーマルウェア売り場、紳士服店、大型スーパーなどで購入できます。また、急な場合や一度しか着用する予定がない場合は、レンタルサービスを利用するのも一つの方法です。インターネットのレンタルサービスや、葬儀社が提携している貸衣装店などで手配が可能です。
Q3. お焼香の作法に自信がありません。
A3. お焼香の作法は宗派によって異なりますが、前の人のやり方を見て真似をすれば、大きく間違うことはありません。大切なのは、故人様を悼み、ご冥福を祈る気持ちです。ご自身の宗派の作法が分からない場合は、心を込めて一度だけお焼香をされても、失礼にはあたりません。葬儀全体の流れやマナーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。(※内部リンク想定)
Q4. 仕事帰りの作業着でも参列していいですか?
A4. やむを得ない事情があり、どうしても着替える時間がない場合は、作業着のまま参列することも許容される場合があります。その際は、ご遺族に「仕事帰りのため、このような服装で大変失礼いたします」とお詫びの一言を伝えましょう。埃や汚れはできる限り落とし、清潔な状態で伺う心遣いが大切です。何よりも、お悔やみの気持ちを伝えに駆けつけることが重要です。
まとめ:大切なのは故人を偲び、ご遺族に寄り添う心です
この記事では、お通夜の服装について、男性、女性、お子様、そして様々な状況に合わせて詳しく解説してまいりました。
お通夜の服装の基本
- 男性: 光沢のないダークスーツ、白いシャツ、黒いネクタイ・靴・靴下
- 女性: 肌の露出を抑えたブラックフォーマル、黒いストッキング・パンプス・バッグ
- 子供: 学校の制服が正装。ない場合はモノトーンの服装
突然の悲しみの中で、慣れない準備をすることは、心身ともに大きなご負担かと存じます。服装のマナーは、故人様とご遺族への敬意を表すためのものですが、最も大切なのは、故人を偲び、悼むお気持ちです。
もし、細かな点で分からないことがあったとしても、あまりご自身を責めないでください。心を込めてお見送りすることが、何よりのご供養となります。
私たち「TERASU by 玉泉院」は、これからも皆様の心に寄り添い、終活や葬儀に関する不安を少しでも和らげるお手伝いができればと願っております。
この記事が、皆様のお役に立てましたら幸いです。
