【デジタル終活】故人のスマホやSNS、どうすれば?遺族のための手続き完全ガイド


大切なご家族がお亡くなりになり、深い悲しみの中、心身ともにお辛い日々をお過ごしのことと存じます。故人を偲ぶいとまもないまま、様々な手続きに追われ、何から手をつけて良いか分からず、途方に暮れていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

特に近年、多くの方が頭を悩ませるのが、故人が遺したスマートフォンやパソコン、SNSアカウントといった「デジタル遺品」の取り扱いです。パスワードが分からず中身を確認できない、有料サービスの解約方法が分からない、SNSをどうしたら良いか判断に迷うなど、その悩みは尽きません。

この記事では、長年にわたり大切な方とのお別れに寄り添い続けてきた私たち「TERASU by 玉泉院」が、ご遺族の皆様が「デジタル終活」の手続きを滞りなく進められるよう、その全体像から具体的な各手続きの方法、注意点までを一つひとつ丁寧に解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、「何を」「いつまでに」「どうすればいいか」が明確になり、皆様の心のご負担が少しでも軽くなることを願っております。決してご自身を追い詰めず、故人様と向き合う大切な時間を確保するための一助となれば幸いです。

最初に:デジタル終活でご遺族が行うべきことの全体像

まず、何から始めるべきか、全体像を把握することが大切です。ここでは、ご遺族が行うべきデジタル終活の主な流れをチェックリストにまとめました。すべてを一度に行う必要はありません。優先順位の高いものから、ご自身のペースで少しずつ進めていきましょう。

【デジタル終活 手続きチェックリスト】

優先度手続きの項目主な内容
① デジタル遺品の全体像を把握する故人のPC、スマホ、タブレット、記録媒体などを確認する
② 継続的な支払いが発生するサービスの特定と解約サブスクリプション、月額サービスなどを特定し、解約する
③ SNSアカウントの対応(追悼または削除)Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなどの手続きを行う
④ ネット銀行・ネット証券・暗号資産の確認相続財産として、専門家と連携しながら手続きを進める
⑤ メールアカウントやクラウドサービスの確認重要な連絡やデータが残っていないか確認する
⑥ 写真や動画など思い出のデータの整理・保存家族で共有・保存する方法を検討する
随時⑦ 不要なアカウントやデータの削除プライバシー保護のため、不要な情報を削除する

見出し:故人のスマートフォンやPCのロックを解除し、中身を確認します

故人のデジタル機器(スマートフォン、パソコン、タブレットなど)は、多くの手続きの手がかりが詰まった情報の宝箱です。しかし、同時にパスワードや生体認証によって固く守られており、最初に立ちはだかる大きな壁でもあります。

なぜ中身の確認が必要なのか

無理にこじ開けるようで、心苦しく感じられるかもしれません。しかし、以下の情報を確認するために、ご遺族によるアクセスが必要になる場合があります。

  • 契約している有料サービスの特定: クレジットカードの明細に載らない契約が見つかることがあります。
  • 友人・知人への連絡: 故人の交友関係を把握し、訃報を伝えるために必要になることがあります。
  • ネット銀行やネット証券の存在: 相続に関わる重要な情報です。
  • 故人の遺志や大切なメッセージ: 日記やメモに、ご家族への想いが綴られているかもしれません。
  • 思い出の写真や動画: かけがえのない思い出を保存するために必要です。

ロック解除は極めて困難なのが現実

残念ながら、現代のスマートフォンやPCのセキュリティは非常に強固であり、ご遺族であってもロックを解除するのは簡単ではありません。

  • パスワード・PINコード: 故人がどこかにメモを残していないか探すのが第一歩です。誕生日や記念日など、推測できるものを数回試すのは良いですが、何度も間違えるとデータが初期化される危険性があるため注意が必要です。
  • 生体認証(指紋・顔): 故人が亡くなっている場合、基本的には利用できません。

各社の公式な対応

IT企業各社は、プライバシー保護の観点から、ユーザーの死後におけるアカウントへのアクセスに厳しいルールを設けています。

多くの方がつまずきやすいポイント

生前の対策がない場合、ご遺族が故人のデジタル機器のロックを合法的に解除し、すべてのデータにアクセスするのは、残念ながら非常に難しいのが現状です。専門業者に依頼する方法もありますが、高額な費用がかかるうえ、必ず成功する保証はありません。まずは公式な手続きを試み、難しい場合は次のステップ(有料サービスの特定など)に視点を移すことも大切です。


見出し:継続的な支払いが発生するサービスを特定し、解約手続きを進めます

故人が気づかないうちに契約していた月額・年額のサービス(サブスクリプション)は、解約しない限り支払いが続いてしまいます。少しでも早く特定し、解約手続きを進めることが重要です。

どんなサービスがあるか?

以下のようなサービスが一般的です。

  • エンターテイメント系: Netflix, Amazon Prime, Spotify, YouTube Premium など
  • ショッピング系: Amazon Prime, 〇〇放題サービス など
  • ニュース・情報系: 新聞社の電子版、ビジネス系情報サイト など
  • 学習・スキル系: オンライン英会話、資格学習サービス など
  • クラウドストレージ: iCloud+, Google One, Dropbox など
  • その他: ファンクラブ会費、ソフトウェアの年間ライセンス料 など

サービスの特定方法

ロックが解除できない場合でも、以下の方法で契約サービスを特定できる可能性があります。

  1. クレジットカードや銀行口座の利用明細を確認する最も確実な方法です。過去1年分ほどの明細を取り寄せ、毎月または毎年、同じ名義で引き落としがないかを確認しましょう。「AMAZON」「NETFLIX」「APPLE COM BILL」などの記載があれば、それが契約サービスの可能性が高いです。
  2. 郵便物やメールを確認する故人宛の郵便物や、PCで確認できるメールに、契約更新のお知らせや請求書が届いている場合があります。
  3. スマートフォンのホーム画面を確認する(ロック解除できた場合)見慣れないアプリがないか確認し、アプリを開いて契約状況を確認します。

解約手続きの進め方

契約サービスが特定できたら、各サービスの公式サイトにアクセスし、「ヘルプ」や「よくある質問」のページで「契約者の死亡」「解約」などのキーワードで検索します。多くの場合、以下の情報が必要になります。

  • 故人の氏名、登録メールアドレス
  • ご遺族であることが証明できる書類(戸籍謄本など)
  • 死亡の事実が証明できる書類(死亡診断書のコピーなど)

手続きはウェブサイト上で完結する場合もあれば、書類の郵送が必要な場合もあります。一つひとつ根気強く対応していきましょう。

寄り添う視点からのアドバイス

多数のサービスを一度に解約するのは、精神的にも時間的にも大きな負担です。まずは利用明細を見て、金額の大きいものや、すぐに特定できたものから手をつけるのが良いでしょう。ご家族で手分けして進めることもご検討ください。


見出し:各SNSアカウントを追悼アカウントにするか、削除の手続きを行います

故人のSNSアカウントを放置すると、乗っ取りや意図しない情報拡散のリスクがあります。ご家族の皆様で相談の上、「追悼アカウント」として残すか、完全に「削除」するかを決め、手続きを進めましょう。

追悼アカウントとは?

一部のSNSでは、故人のアカウントを追悼の場として残す機能があります。

  • メリット: 故人の友人や知人が思い出を共有し、偲ぶ場として機能します。故人の生きた証を残すことができます。
  • デメリット: アカウントが残り続けることを快く思わないご親族がいる可能性もあります。管理ができないため、過去の投稿が意図せず誰かを傷つける可能性もゼロではありません。

主要SNSの手続き方法

主要なSNSでは、契約者の死後にご遺族が申請するための専用窓口が設けられています。

  • Facebook「追悼アカウント」への移行、またはアカウントの削除をリクエストできます。追悼アカウントになると、アカウント名の上に「追悼」と表示され、新たなログインや友達リクエストの承認はできなくなります。故人が生前に「追悼アカウント管理人」を指定していれば、その人が一部の管理を行えます。
  • X (旧Twitter)現在、Xには追悼アカウントの機能はありません。ご遺族はアカウントの削除を要請することになります。プライバシー保護のため、ご遺族であってもアカウントの投稿内容などにアクセスすることはできません。
  • InstagramFacebookと同様に、「追悼アカウント」への移行、またはアカウントの削除をリクエストできます。追悼アカウントになると、投稿はそのまま残りますが、「発見」ページなどに表示されなくなります。
  • LINELINEは一身専属(※)のサービスとされており、相続の対象にはなりません。そのため、ご遺族がアカウントを引き継ぐことはできません。アカウントの削除を希望する場合は、問題報告フォームから連絡する必要があります。ただし、故人のスマートフォンが操作できない場合、アカウントはそのまま残ることになります。

寄り添う視点からのアドバイス

故人のSNSには、ご遺族の知らない交友関係が広がっていることもあります。突然アカウントを削除すると、事情を知らない友人の方々を驚かせてしまうかもしれません。可能であれば、ご遺族のアカウントなどから訃報を伝え、しばらくしてから削除や追悼アカウントへの移行手続きを行うと、より丁寧な対応となるでしょう。


見出し:故人のデジタル資産を確認し、相続手続きを行います

近年増えているネット銀行やネット証券、さらには暗号資産(仮想通貨)といった「デジタル資産」も、通常の預貯金や不動産と同じく相続の対象となります。これらは紙の通帳がないため、ご遺族がその存在に気づきにくいという特徴があり、注意が必要です。

デジタル資産にはどんなものがあるか

  • ネット銀行の預金: 楽天銀行、PayPay銀行、ソニー銀行など
  • ネット証券の有価証券: SBI証券、楽天証券などで保有する株式、投資信託など
  • FX(外国為替証拠金取引)の証拠金
  • 暗号資産(仮想通貨): ビットコイン、イーサリアムなど
  • 電子マネー: Suica、PayPayなどのチャージ残高
  • その他: アフィリエイト収入、有料コンテンツの売上など

デジタル資産の確認と相続手続き

  1. 存在の確認: 故人のスマートフォンやPCのブックマーク、アプリ、メール履歴、郵便物などから、取引の形跡がないかを探します。特に金融機関からの定期的なメールは重要な手がかりです。
  2. 金融機関への連絡: 口座の存在が判明したら、その金融機関のカスタマーサポートに連絡し、契約者が死亡した旨を伝えます。相続手続きに必要な書類や手順について案内があります。
  3. 専門家への相談: デジタル資産の相続は、手続きが複雑になるケースが多くあります。特に、ログインIDやパスワードが不明な場合、取引履歴の確認が困難な場合があります。相続財産の全体像が把握できた段階で、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

【期限別やることリスト(相続関連)】

期限やること概要
3ヶ月以内相続放棄・限定承認の検討負債が多い場合など。家庭裁判所への申述が必要です。
4ヶ月以内準確定申告故人に事業所得などがあった場合、相続人が代わりに行います。
10ヶ月以内相続税の申告・納付遺産総額が基礎控除額を超える場合に必要です。

信頼性のための注意喚起

暗号資産の相続は特に複雑で、専門知識が不可欠です。秘密鍵(※)を紛失すると、資産を永久に引き出せなくなるリスクもあります。故人が暗号資産を保有していた可能性が少しでもある場合は、速やかに相続に詳しい弁護士にご相談ください。

(※注釈)秘密鍵(ひみつかぎ): 暗号資産を送金したり、取り出したりする際に必要となる、非常に長い文字列のパスワードのようなもの。これがないと、資産にアクセスすることはできません。


見出し:故人との思い出のデータを整理し、保存または削除を検討します

手続きとは少し異なりますが、故人が遺した写真や動画、メールや日記といったデータは、ご遺族にとってかけがえのない宝物です。これらをどう扱うか、ご家族で話し合う時間もまた、大切なグリーフケア(※)の一つとなり得ます。

(※注釈)グリーフケア: 身近な人を亡くした悲しみ(grief)から立ち直れるよう、寄り添い、支援すること。

データの保存方法

  • 外付けハードディスクやSSDにコピーする: 手元に物理的な形で残しておくことができます。複数の場所に保管すると、より安全です。
  • クラウドストレージにアップロードする: GoogleフォトやAmazon Photosなどのサービスを利用すれば、家族間で簡単に共有できます。
  • フォトブックやDVDを作成する: 特に気に入っている写真を選んで、形あるものにするのも素敵な供養になります。

データの削除について

故人のプライバシーに関わるデータや、ご遺族が見ることで辛くなってしまうようなデータは、無理に残しておく必要はありません。ご家族で話し合い、皆様が納得した上で削除を検討するのも一つの選択です。

寄り添う視点からのアドバイス

データの整理は、故人との思い出を一つひとつ振り返る、 emotional(感情的)な作業です。決して急ぐ必要はありません。気持ちが落ち着いてから、少しずつ手をつけるので十分です。「これはお父さんらしい写真だね」「こんな場所に行っていたんだね」と、ご家族で語り合いながら進めることで、故人を偲ぶ温かい時間となることでしょう。


見出し:ご自身での対応が困難な場合は、専門家への相談を検討します

ここまで様々な手続きをご紹介してきましたが、悲しみの中でこれらすべてを完璧に行うのは、決して簡単なことではありません。もし「自分だけでは難しい」「何から手をつけて良いか分からない」と感じたら、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることをご検討ください。

相談できる専門家と内容

専門家主な相談内容
弁護士相続全般。特に遺産分割で親族間のトラブルが予想される場合や、高額なデジタル資産がある場合。
司法書士不動産の名義変更など、相続登記が伴う手続き。遺産承継業務全般。
税理士相続税の申告が必要な場合。財産評価や節税に関する相談。
行政書士遺産分割協議書の作成、各種サービスの解約代行(※法律で制限される業務を除く)。
デジタル遺品整理・デジタル終活専門業者パスワードの解析、デジタル機器からのデータ救出、各種アカウントの調査や解約代行など。

専門家に依頼するには費用がかかりますが、複雑な手続きを任せることで、ご遺族の心身のご負担を大幅に軽減できるという大きな利点があります。まずは無料相談などを利用して、信頼できる専門家を探してみてはいかがでしょうか。

[関連記事:【葬儀後の手続き一覧】期限内にやるべきことをチェックリストで解説]

まとめ:故人を偲ぶ時間を大切にするために

本日は、ご遺族のための「デジタル終活」について、具体的な手続きや注意点を解説しました。

  • まずは全体像を把握し、優先順位の高いものから手をつける
  • スマホやPCのロック解除は困難な場合が多いことを理解する
  • サブスクリプションの解約を早めに行う
  • SNSは「追悼」か「削除」か、家族で話し合って決める
  • ネット銀行などのデジタル資産は、重要な相続財産
  • 思い出のデータは、無理のない範囲でゆっくり整理する
  • 困ったときは、一人で抱え込まず専門家に相談する

大切な方を亡くされた直後は、心が動揺し、冷静な判断が難しい状態にあるのが当然です。どうか「すべてを完璧にやらなければ」とご自身を追い詰めないでください。

今回ご紹介した手続きは、あくまで故人が安心して旅立ち、そして遺されたご家族が新たな日常へと歩み出すための準備です。最も大切なのは、ご遺族自身の心と体を休め、故人との思い出を静かに偲ぶ時間を確保することです。

私たち「TERASU by 玉泉院」は、これからも皆様の心に寄り添い、終活やご葬儀に関するあらゆる不安を照らす存在でありたいと願っています。この記事が、皆様の一助となれば幸いです。