大切な方を見送る葬儀は、人生において重要な儀式の一つです。しかし、急にやってくるその時に「費用はどれくらいかかるの?」「相場がわからない」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
編集部では、これまで数多くの葬儀関連のご相談を受けてきました。その中で最も多いのが「適正な費用がわからない」「悪質な業者に高額請求されないか心配」というお声です。
この記事では、最新の調査データをもとに、葬儀費用の全国平均から地域差、費用を抑える方法まで、信頼できる情報をお届けします。
【結論】2024年の葬儀費用全国平均は118.5万円
最新の「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」によると、葬儀費用の全国平均は118.5万円となっています。これは前回調査(2022年)の110.7万円から約8万円の増加です。
新型コロナウイルスの影響が和らぎ、家族だけでなく知人も含めた従来の葬儀スタイルに戻る傾向が見られることが、費用増加の主な要因と考えられます。
葬儀費用の基本的な内訳
葬儀費用は大きく分けて以下の3つの要素で構成されています。
費用項目 | 全国平均額 | 内容 |
---|---|---|
基本料金 | 75.7万円 | 祭壇、棺、遺影写真、斎場利用料、火葬料など |
飲食費用 | 20.7万円 | 通夜振る舞い、精進落としなどの会食代 |
返礼品費用 | 22.0万円 | 香典返し、会葬御礼品など |
基本料金の詳細
基本料金には以下の項目が含まれます:
- 祭壇費用:故人を安置し、参列者がお参りするための祭壇設営
- 棺代:材質やデザインにより価格が大きく異なります
- 遺影写真作成費:写真の修正や拡大印刷費用
- 斎場利用料:式場の規模や設備により変動
- 火葬料:公営火葬場と民営火葬場で料金差があります
- 搬送費:病院から斎場、火葬場への搬送費用
飲食費・返礼品費について
飲食費・返礼品費は参列者の人数に比例して変動するため、葬儀の規模が直接的に費用に影響します。
葬儀形式別の費用相場
2024年の調査では、葬儀形式別の費用は以下のようになっています:
葬儀形式 | 平均費用 | 特徴 |
---|---|---|
一般葬 | 161.3万円 | 通夜・告別式を行い、参列者を広く招く |
家族葬 | 105.7万円 | 近親者のみで行う小規模な葬儀 |
一日葬 | 87.5万円 | 通夜を行わず、1日で完結する葬儀 |
直葬(火葬式) | 42.8万円 | 通夜・告別式を行わず、火葬のみ |
編集部の体験談
編集部スタッフの実体験として、昨年家族葬を執り行った際は、事前に複数社から見積もりを取ることで、当初提示された金額から30万円以上安くなったケースがありました。「初回提示額がすべて」ではないということを実感した出来事でした。
都道府県別の費用格差
葬儀費用は地域によって大きな差があります。
費用が高い地域TOP5
最新データによる費用の高い地域:
- 栃木県:179.5万円
- 福島県:142.4万円
- 茨城県:141.7万円
- 宮城県:137.9万円
- 千葉県:130.8万円
費用が安い地域TOP5
- 秋田県:96.8万円
- 山形県:102.0万円
- 北海道:102.4万円
- 埼玉県:104.4万円
- 岩手県:105.9万円
地域差の要因には、以下が挙げられます:
- 地域の慣習や伝統:関東地方では比較的大規模な葬儀が好まれる傾向
- 斎場や火葬場の料金体系:公営施設の充実度により差が生じる
- 人件費の違い:都市部では人件費が高くなる傾向
- 参列者数の違い:地域のコミュニティの結束により参列者数が変動
知らないと損する費用節約のポイント
1. 複数社からの見積もり取得
編集部が最も重要と考えるのが、複数の葬儀社から見積もりを取ることです。同じ内容でも業者により価格差は20-30万円になることも珍しくありません。
2. 公的補助制度の活用
国民健康保険加入者
- 自治体から「葬祭費」を受給可能(東京都23区では7万円)
社会保険加入者
- 「埋葬料」として5万円が支給
生活保護受給者
- 「葬祭扶助制度」により最低限の葬儀費用を支給
これらの制度は葬儀後2年間で時効となるため、必ず申請しましょう。
3. 斎場選びでの節約
公営斎場の活用
- 民営斎場に比べて利用料金が安価
- 火葬場併設の場合、移動費用も節約可能
- ただし予約が取りにくいデメリットがあります
4. 不要なオプションの見直し
葬儀社が提案するオプションには、以下のような項目があります:
- 高級棺への変更:基本的な棺でも十分な場合が多い
- 生花の追加:必要最小限に留める
- 過度な会食内容:故人を偲ぶ気持ちが大切であり、豪華である必要はない
注意したい葬儀業者の見分け方
悪質な業者を避けるために、以下の点を確認しましょう:
信頼できる業者の特徴
- 見積もりが詳細で明確:項目ごとに金額が明記されている
- 追加費用の説明が丁寧:どのような場合に追加費用が発生するか事前説明
- 24時間対応体制:緊急時にも適切に対応してくれる
- 地域での実績が豊富:長年地域に根ざした営業をしている
避けるべき業者の特徴
- 契約を急がせる:「今決めないと高くなる」などの圧迫的な営業
- 見積もりが大雑把:「一式〇〇万円」のような詳細不明の記載
- 追加費用の説明不足:後から高額な追加費用を請求される可能性
- 連絡先が不明確:緊急時に連絡が取れない業者
香典による費用軽減効果
香典の平均受取額は約71万円とされています。実質的な自己負担額は以下のようになります:
葬儀形式 | 葬儀費用 | 香典収入 | 実質負担額 |
---|---|---|---|
一般葬 | 161.3万円 | 約70万円 | 約90万円 |
家族葬 | 105.7万円 | 約30万円 | 約75万円 |
一日葬 | 87.5万円 | 約20万円 | 約67万円 |
直葬 | 42.8万円 | ほぼなし | 約43万円 |
※香典収入は参列者数により大きく変動します
葬儀費用の支払い方法
1. 故人の預貯金から支払う場合
2019年7月に創設された「預貯金の仮払い制度」により、故人の預貯金の一部をすぐに引き出すことが可能になりました。ただし、一定の手続きが必要です。
2. 生命保険の活用
生命保険に加入している場合、死亡保険金を葬儀費用に充てることができます。保険金の支払いには通常1-2週間程度かかるため、一時的な立て替えが必要な場合があります。
3. 葬儀ローンの利用
多くの葬儀社では提携する信販会社の葬儀ローンを利用できます。金利は年2-10%程度で、分割払いが可能です。
事前に準備しておくべきこと
1. 家族間での話し合い
- 故人の希望する葬儀形式:エンディングノートなどで確認
- 費用の予算設定:家族で負担可能な金額を話し合う
- 葬儀社の事前検討:複数社の資料を取り寄せ、比較検討
2. 積立や保険の検討
- 葬儀保険:月々少額の保険料で葬儀費用をカバー
- 互助会への加入:月払いで葬儀費用を積み立て
- 専用貯金:葬儀専用の貯金口座を開設
3. 必要書類の整理
葬儀に必要な書類を事前に整理しておくことで、いざという時に慌てずに済みます:
- 死亡診断書:医師から発行
- 印鑑登録証明書:各種手続きに必要
- 年金手帳・保険証:各種給付金申請に必要
まとめ
葬儀費用の全国平均は118.5万円ですが、葬儀の形式や地域、業者選びによって大きく変動します。最も重要なのは以下の点です:
- 複数社から見積もりを取る:価格比較により適正価格を把握
- 公的補助制度を活用:最大7万円程度の給付金を受給
- 信頼できる業者を選ぶ:詳細な見積もりと丁寧な説明をする業者
- 事前準備を怠らない:家族間での話し合いと資金準備
故人を心を込めて見送ることが最も大切ですが、適正な費用で葬儀を執り行うことで、残されたご家族の負担を軽減できます。この記事が、皆様の不安解消の一助となれば幸いです。
※本記事の費用データは、株式会社鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」および公益財団法人生命保険文化センターの調査結果を参考にしています。
※各種補助制度の詳細は、加入している保険や自治体により異なりますので、詳しくは各窓口にお問い合わせください。
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