【専門家が解説】契約者が死亡した後の解約手続き一覧|いつまでに、誰が、何をすべきか

この度は、ご愁傷様でございます。

大切なご家族を亡くされ、深い悲しみの中、心身ともにお疲れのことと存じます。

故人様を偲ぶいとまもないほどに、ご遺族の皆様には、様々な手続きが待ち受けています。聞き慣れない言葉や煩雑な手続きを前に、「何から手をつければいいのか」「もし間違えてしまったらどうしよう」と、大きな不安を感じていらっしゃるかもしれません。

この記事は、そのようなご遺族の皆様の心に寄り添い、少しでもご負担を和らげるために作成いたしました。

長年、多くの方のお別れをお手伝いしてきた私たち「TERASU by 玉泉院」が、その経験と専門的な知見をもとに、死亡後に必要となる契約の解約・名義変更手続きの全体像から、一つひとつの具体的な進め方まで、丁寧に解説いたします。

この記事を読み終える頃には、「何を」「いつまでに」「どのように」進めればよいかが明確になり、皆様の不安が少しでも解消されることを心から願っております。

決してご無理なさらず、ご自身のペースで一歩ずつ進めていきましょう。私たちが全力でサポートいたします。

【印刷して使える】死亡後の契約手続き 全体チェックリスト

まず、故人様に関する手続きの全体像を把握しましょう。下記は、一般的な手続きを一覧にしたチェックリストです。印刷して、進捗管理にお役立てください。

カテゴリ手続き内容期限の目安担当者チェックメモ
公的手続き死亡届の提出死亡の事実を知った日から7日以内
世帯主の変更届変更があった日から14日以内
国民健康保険の資格喪失届死亡日から14日以内
後期高齢者医療の資格喪失届死亡日から14日以内
介護保険の資格喪失届死亡日から14日以内
年金受給停止手続きなるべく早く(10日または14日以内)
雇用保険受給資格者証の返還死亡後1ヶ月以内
所得税の準確定申告死亡後4ヶ月以内
相続税の申告死亡後10ヶ月以内
ライフライン電気の名義変更・解約すみやかに
ガスの名義変更・解約すみやかに
水道の名義変更・解約すみやかに
通信携帯電話・スマートフォンの解約すみやかに
固定電話の名義変更・解約すみやかに
インターネット回線の解約すみやかに
金融機関預貯金口座の名義変更・解約すみやかに
クレジットカードの解約すみやかに
証券口座(株式・投資信託)すみやかに
生命保険・損害保険の手続きすみやかに
住まい賃貸住宅の解約契約内容を確認し、すみやかに
持ち家(不動産)の相続登記3年以内(義務化)
各種サービスNHK放送受信契約の名義変更・解約すみやかに
新聞・定期購読の解約すみやかに
サブスクリプションサービスの解約すみやかに
その他運転免許証の返納すみやかに
パスポートの失効手続きすみやかに
自動車の名義変更(移転登録)死亡後15日以内
SNSアカウントの削除・追悼設定任意

【期限別】いつまでに何をする?手続きのスケジュール

手続きにはそれぞれ期限が設けられているものがあります。特に期限の短いものから順に進められるよう、時系列でまとめました。

亡くなられてから14日以内に行う手続き

この時期は、葬儀の準備と並行して、非常に慌ただしくなります。ご家族で分担しながら進めることが大切です。

  • 死亡届の提出(7日以内)
  • 火葬許可申請書の提出(死亡届と同時)
  • 年金受給権者死亡届の提出(国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内)
  • 住民票の抹消・世帯主変更届(14日以内)
  • 健康保険・介護保険の資格喪失届(14日以内)

落ち着いてから「すみやかに」進める手続き

葬儀後、少し落ち着いてから着手する手続きです。明確な期限はありませんが、料金が発生し続けるものも多いため、速やかに進めましょう。

  • ライフライン(電気・ガス・水道)の名義変更・解約
  • 通信(携帯電話・インターネット)の解約
  • 金融機関(預貯金口座・クレジットカード)の手続き
  • 各種サービス(NHK・サブスクリプションなど)の解約
  • 運転免許証・パスポートの返納

少し時間を要する、相続に関する手続き

相続人の確定や遺産分割協議など、ご親族間での話し合いが必要となる手続きです。

  • 遺言書の有無の確認
  • 相続人の調査・確定
  • 相続財産の調査
  • 相続放棄・限定承認の申述(相続開始を知った日から3ヶ月以内)
  • 所得税の準確定申告(相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内)
  • 遺産分割協議
  • 不動産の相続登記(相続開始を知った日から3年以内)
  • 相続税の申告・納付(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)

【専門家からのアドバイス】

すべてを一度に行おうとすると、心身ともに大きな負担がかかります。まずは「期限が短いもの」「毎月の支払いが発生しているもの」から優先的に手をつけるのがポイントです。上記リストを参考に、優先順位をつけて一つひとつ着実に進めていきましょう。


【カテゴリ別】各契約の解約・名義変更手続きを詳しく解説

ここからは、具体的な手続きの方法をカテゴリ別に詳しく見ていきましょう。

電気・ガス・水道の手続き:ライフラインの名義変更または解約を進めましょう

故人様名義のままにしておくと、料金の請求が続いてしまいます。その家に誰も住まなくなる場合は「解約」、ご家族が住み続ける場合は「名義変更」の手続きを行います。

  • 手続きをする人: 相続人、またはその家に住み続けるご家族
  • 連絡先: 各電力会社、ガス会社、市区町村の水道局
  • 手続きのポイント:
    • 検針票や請求書に記載されている「お客様番号」が分かると、手続きがスムーズです。
    • 電話やインターネットで手続きできる場合がほとんどです。
    • 最後の検針日までの料金は、後日、相続人のもとへ請求書が送られてくるか、故人様の口座から引き落とされた後に相続財産として精算するのが一般的です。

多くの方がつまずきやすいポイント

電気とガスは自由化により、様々な会社と契約している可能性があります。故人様がどの会社と契約していたか分からない場合は、毎月の引き落とし履歴がある預金通帳や、クレジットカードの明細を確認してみましょう。

見出し:携帯電話・インターネットの手続き:すみやかに解約しましょう

携帯電話やインターネット回線は、利用していなくても基本料金が発生し続けます。多くの場合、解約には死亡の事実が確認できる書類が必要となります。

  • 手続きをする人: 相続人(法定相続人)
  • 連絡先: 各携帯電話会社、プロバイダー
  • 必要なもの(一例):
    • 契約者の死亡が確認できる書類(戸籍謄本、死亡診断書など)
    • 手続きする人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
    • 手続きする人と故人様の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
    • 故人様のSIMカード、端末本体(必要な場合がある)
  • 手続きのポイント:
    • 多くの携帯電話会社では、ショップでのみ解約手続きを受け付けています。事前に来店予約をするとスムーズです。
    • 亡くなった月の利用料金は、日割り計算になるか、満額請求になるか、契約内容によって異なります。
    • 端末代金の残債がある場合は、相続人が支払義務を引き継ぐことになります。
    • インターネット回線は、契約しているプロバイダーと回線事業者の両方に連絡が必要な場合があります。

【専門家からのアドバイス】

故人様のスマートフォンは、他の契約サービスを解約する際の連絡先やIDを確認するために必要となることがあります。すぐに解約するのではなく、他の手続きが一段落するまで、契約を残しておくという選択肢もご検討ください。ただし、その間の利用料金は発生しますのでご注意ください。

見出し:銀行口座・クレジットカードの手続き:相続手続きの第一歩です

金融機関は、口座名義人の死亡を知った時点で、その口座を凍結します。これは、相続財産を保全し、一部の相続人が勝手に預金を引き出すことを防ぐための措置です。

  • 手続きをする人: 相続人
  • 連絡先: 故人様が利用していた銀行、クレジットカード会社
  • 手続きの流れ(銀行口座):
    1. 金融機関へ死亡の連絡をし、口座を凍結してもらう。
    2. 必要書類(相続手続依頼書、故人様の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、遺言書や遺産分割協議書など)を準備する。
    3. 書類を金融機関に提出し、払い戻し(解約)または名義変更の手続きを行う。
  • クレジットカードの手続き:
    • カード会社に電話で連絡し、会員が死亡した旨を伝えます。
    • 未払いの利用残高がある場合は、相続人が支払う必要があります。
    • 貯まっていたポイントは、原則として失効します。
    • 年会費が発生するカードは、放置すると請求が続くため、必ず解約しましょう。

なぜ手続きが必要なのか

故人様の預貯金は、相続人全員の共有財産です。口座が凍結されると、葬儀費用などの支払いが困難になる場合があります。その際は、2019年7月から始まった「預貯金の仮払い制度」を利用することで、一定額までであれば、相続人単独で預金を引き出すことが可能です。

(参考:法務省 遺産分割前の払戻し制度のご案内)

見出し:住まいに関する手続き:賃貸と持ち家で異なります

お住まいが賃貸か持ち家かによって、必要な手続きが大きく変わります。

賃貸住宅の場合:賃貸借契約の解約を進めましょう

  • 手続きをする人: 相続人(連帯保証人になっている場合が多い)
  • 連絡先: 大家さん、または不動産管理会社
  • 手続きのポイント:
    • 賃貸借契約書を確認し、解約の申し入れ期間(通常1ヶ月前までなど)や条件を確認します。
    • 故人様が一人暮らしだった場合、相続人が家賃や原状回復費用を支払う義務を負います。
    • 室内に残された家財道具(遺品)の整理も必要となります。

持ち家(不動産)の場合:相続登記を行いましょう

  • 手続きをする人: 不動産を相続する相続人
  • 連絡先: 法務局
  • 手続きのポイント:
    • 不動産を誰が相続するかを遺産分割協議で決定し、その不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記(相続登記)を申請します。
    • 2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく怠った場合は過料が科される可能性があります。
    • 手続きが複雑なため、司法書士などの専門家へ依頼するのが一般的です。

【専門家からのアドバイス】

故人様が一人暮らしだった賃貸住宅の片付けは、ご遺族にとって精神的にも肉体的にも大きな負担となります。ご自身たちで進めるのが難しい場合は、無理をせず、遺品整理の専門業者に相談することもご検討ください。

見出し:各種サービスの手続き:見落としがちな契約を解約しましょう

月額制のサービスや定期購読など、見落としがちな契約も忘れずに解約しましょう。

  • 対象となるサービス(一例):
    • NHK放送受信契約
    • 新聞、雑誌の定期購読
    • 動画配信サービス(Netflix, Amazon Primeなど)
    • 音楽配信サービス(Spotify, Apple Musicなど)
    • フィットネスジム、習い事の月謝
    • 各種ファンクラブ
    • ウォーターサーバー
  • 手続きのポイント:
    • 故人様の預金通帳の引き落とし履歴や、クレジットカードの明細、郵便物などを確認し、契約しているサービスをリストアップします。
    • 各サービスの公式サイトやお客様窓口に連絡し、契約者死亡による解約の旨を伝えます。
    • 多くはインターネット上で手続きが完結しますが、電話での本人確認が必要な場合もあります。

多くの方がつまずきやすいポイント

近年急増しているサブスクリプションサービスは、ご家族も把握していないケースが少なくありません。クレジットカードの明細を丁寧に確認することが、不要な支払いを止めるための最も確実な方法です。


契約者死亡後の手続きに関するよくあるご質問(Q&A)

Q1. 手続きは誰が行うべきですか?

A1. 基本的に、手続きは「相続人」が行います。相続人が複数いる場合は、代表者を決めて進めるとスムーズです。ただし、手続きによっては法定相続人全員の同意や署名、実印が必要になることもあります。

Q2. 故人の契約内容が全く分かりません。どうすれば良いですか?

A2. まずは、故人様宛ての郵便物、預金通帳の引き落とし履歴、クレジットカードの利用明細などを丁寧に確認しましょう。スマートフォンやパソコンの契約情報やメール履歴も手がかりになります。それでも不明な点が多い場合は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談することも一つの方法です。

Q3. 負債(借金)の方が多いようです。どうしたら良いですか?

A3. 故人様の財産よりも借金の方が多い場合は、「相続放棄」という選択肢があります。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことになります。この手続きは、ご自身のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。期限が短いため、早めに弁護士などの専門家にご相談ください。

(参考:裁判所 相続の放棄の申述)

Q4. 手続きが多すぎて、自分たちだけではできそうにありません。

A4. ご心痛の中、多くの手続きをご自身たちだけで進めるのは、本当に大変なことです。金融機関の相続手続きや不動産の相続登記など、複雑な手続きは司法書士や行政書士に代行を依頼することができます。また、何から手をつけて良いか分からない場合は、私ども「玉泉院」のような葬儀社や、市区町村の相談窓口で相談することも可能です。決して一人で抱え込まず、専門家の力を借りることをためらわないでください。


まとめ:ご自身のペースで、一つひとつ着実に

大切な方を亡くされた直後は、悲しみに暮れる間もなく、様々な現実に直面します。この記事でご紹介した手続きの多さに、改めて戸惑いや不安を感じられたかもしれません。

しかし、焦る必要はございません。

まずは、チェックリストやスケジュールを参考に、全体像を把握することから始めてみてください。そして、期限の迫っているものから、ご家族と協力しながら、一つひとつ着実に進めていきましょう。

手続きを進める中で、故人様がどのようなものに興味を持ち、どのようなサービスを利用していたのか、生前の暮らしに思いを馳せる瞬間があるかもしれません。それは、ご遺族にとって故人様と向き合う、もう一つの大切な時間となるはずです。

私たち「TERASU by 玉泉院」は、手続きの先にある皆様の穏やかな日常を心から願っております。もし何かお困りのこと、ご不安なことがございましたら、いつでも私たちにご相談ください。長年の経験を持つ専門スタッフが、皆様の心に寄り添い、サポートさせていただきます。