「社員の親が亡くなった。会社からの香典はいくら?」「社内規程がなく、そのつど判断に迷う」「経費処理の勘定科目は何になる?」
この記事では①会社から従業員への香典の相場・続柄別の目安、②慶弔規程のサンプル条文、③経費処理の仕訳と勘定科目(福利厚生費・接待交際費の区分)、④領収書がないときの証明方法まで実務で使える形で解説します。
まず押さえる:会社の香典の2種類の性質
会社が出す香典には、性質の異なる2種類があります。これを混同すると経費処理で誤りが出ます。
| 種類 | 対象 | 勘定科目 | 性格 |
|---|---|---|---|
| 従業員・役員向け | 自社の社員・役員とその家族(元社員も含む場合あり) | 福利厚生費 | 給与以外の従業員サポート |
| 取引先向け | 取引先・仕入先・顧客などの社外関係者とその家族 | 接待交際費 | ビジネス関係の維持・促進 |
💡 この記事の主題は「従業員向け(福利厚生費)」の香典です
取引先への香典(接待交際費)は金額の上限規制が異なります。本記事では従業員・役員とその家族への香典を中心に解説します。
会社から従業員への香典相場
従業員本人が亡くなった場合
| 区分 | 一般的な相場 | 補足 |
|---|---|---|
| 業務上の死亡(労災など) | 50,000〜100,000円 | 会社の責任が生じる場合は手厚い対応が一般的 |
| 業務外の死亡(病気・私的事故など) | 30,000〜50,000円 | 勤続年数・役職に応じて調整 |
| 役員・管理職クラス | 50,000〜100,000円以上 | 社葬を検討する場合もある |
従業員の家族が亡くなった場合(続柄別)
| 続柄 | 目安金額 | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 10,000〜30,000円 | 最も生活に影響が大きい関係として高め設定 |
| 父母・義父母 | 10,000〜30,000円 | 配偶者に準じる |
| 子ども | 10,000〜30,000円 | 年齢を問わず同等の配慮 |
| 祖父母・義祖父母 | 5,000〜10,000円 | やや控えめが一般的 |
| 兄弟姉妹 | 5,000〜10,000円 | 祖父母と同等程度 |
⚠ 10万円超は給与認定リスクに注意
税務上、「社会通念上相当と認められる金額を超える」と判断されると、超過部分が受取人の給与として課税される可能性があります。実務上は10万円超から税務調査でチェックされやすいとされています。10万円を超える場合は、金額の根拠(役職・勤続年数・業務上の事故等)を文書で残してください。
相場を決める際の判断軸
| 判断軸 | 考え方 |
|---|---|
| 故人との続柄 | 配偶者・父母・子ども>祖父母・兄弟姉妹 |
| 従業員の役職 | 役員・管理職は相場の上限側。一般社員は中央値 |
| 勤続年数 | 長期在籍者への配慮として上乗せする企業が多い |
| 業務上・業務外の区別 | 業務上の死亡は特に手厚い対応が求められる |
| 会社の規模・財務状況 | 中小・スタートアップは「心のこもった少額」でも十分。金額より迅速さと声かけが大切 |
経費処理:勘定科目と仕訳・領収書
従業員向け(福利厚生費)の仕訳例
福利厚生費 30,000 / 現金 30,000
(摘要:香典 営業部○○様 ご尊父ご逝去)
接待交際費 30,000 / 現金 30,000
(摘要:香典 ○○株式会社 △△様 ご逝去)
福利厚生費 13,000 / 現金 13,000
(摘要:弔電・供花 ○○様 ご令室ご逝去)
旅費交通費 5,000 / 現金 5,000 ※消費税課税
(摘要:葬儀参列交通費 ○○様葬儀)
※香典・弔電・供花は消費税不課税。参列交通費は消費税課税です。
領収書がない場合の証明方法
葬儀の受付では領収書は発行されません。以下のいずれかで支出を証明できます。
| 証明書類 | 内容 | 有効性 |
|---|---|---|
| 会葬案内状(コピー) | 通夜・葬儀の日時・場所が記載された案内状 | ◎ 最も確実 |
| 訃報通知のコピー | 故人・日時・会場の記載があるもの | ○ 有効 |
| 出金伝票・メモ | 日付・支払先・目的・金額・支払者を記載 | ○ 有効(内部文書) |
| 弔慰金支給申請書 | 社内規程に基づく申請書(承認印あり) | ◎ 最も信頼性が高い |
✅ 実務のポイント:摘要欄に必ず記載する
仕訳の摘要欄に「相手先名+続柄+用途(香典)」を必ず記入します。税務調査が入った際に、支出の事実・目的・金額の妥当性を説明できる状態にしておくことが重要です。
消費税の区分(不課税・課税の違い)
| 支出項目 | 消費税区分 |
|---|---|
| 香典(現金) | 不課税取引 |
| 弔電の費用 | 不課税取引 |
| 供花・花輪の費用 | 課税取引(消費税あり) |
| 参列の交通費・宿泊費 | 課税取引(消費税あり) |
慶弔規程のサンプル条文(コピーして使える)
規程が整備されていると、担当者の判断負担が減り、従業員への説明も一貫性が保てます。以下は実務で使えるシンプルな条文例です。自社の状況に合わせて調整してください。
(目的)
第○条 この規程は、従業員及びその家族に弔事が生じた場合に、会社として
弔慰の意を表するための基準を定めることを目的とする。
(支給対象者)
第○条 弔慰金の支給対象者は次の各号に掲げる者とする。
(1) 正規雇用従業員
(2) 契約社員(雇用期間3か月以上)
(3) パートタイム従業員(週20時間以上の勤務者)
(4) 前各号に準じる者で、死亡時に在籍していた者
(5) 退職後3か月以内に死亡した元従業員(勤続1年以上の者)
(弔慰金の金額)
第○条 弔慰金の支給額は次のとおりとする。
■従業員本人の死亡
一般社員: 30,000円
主任・係長: 50,000円
課長・管理職: 70,000円
部長・役員: 100,000円以上(都度決定)
■従業員の家族の死亡
配偶者・父母・子ども:20,000円
祖父母・兄弟姉妹: 10,000円
(申請手続き)
第○条 従業員は、弔事が生じた場合、速やかに直属の上司を経由して
人事担当部署に申請する。申請には次の書類を添付すること。
(1) 弔慰金支給申請書(所定様式)
(2) 会葬案内状または訃報通知(写)
(支給方法)
第○条 弔慰金は申請承認後、速やかに現金または口座振込にて支給する。
(雑則)
第○条 この規程に定めのない事項については、その都度会社が判断する。
💡 規程を作るときの3つのポイント
①公平性の担保:同じ状況なら同じ金額になるよう、続柄・役職による区分を明確に。あいまいな基準は不満を生みます。
②周知が重要:規程を作っても従業員に伝わらなければ意味がありません。就業規則に組み込むか、入社時に配布する書類に含めましょう。
③定期的な見直し:物価・社会状況の変化に合わせて2〜3年おきに金額を見直すことをお勧めします。
訃報受領から支給・経費処理までの流れ
-
1訃報の受領と情報確認(当日〜翌日)
故人氏名・続柄・通夜・葬儀の日時場所・宗教宗派・家族葬かどうか・香典辞退の有無を確認。プライバシーへの配慮を忘れずに。 -
2社内連絡と承認(24時間以内)
直属上司への報告 → 人事・総務担当への共有 → 金額の決定・承認。社内規程がある場合はそれに従う。 -
3香典袋の準備(通夜前まで)
宗派に合った表書き(浄土真宗は「御霊前」ではなく「御仏前」)。新札は避け、肖像が見えないよう裏向きに封入。筆ペンで楷書に。 -
4渡し方の選択
通夜または葬儀の受付で渡すのが原則。家族葬で参列辞退の場合は現金書留で郵送(お悔やみの手紙を同封し、葬儀前日までに着くよう手配)。 -
5経費処理(支給後速やかに)
福利厚生費で仕訳。摘要欄に「相手先氏名・続柄・用途」を記載。会葬案内状または申請書を証憑として保管。 -
6記録の保管(税務関係書類は7年間)
弔慰金支給申請書・承認記録・会葬案内状コピー・仕訳明細を7年間保管。
香典辞退・家族葬への対応
近年増えている「家族葬・香典辞退」への対応は以下を参考にしてください。
| 状況 | 対応方法 |
|---|---|
| 香典辞退の意向を受けた | 意向を最優先に尊重。弔電のみ送付し、後日(忌明け後)に改めて従業員本人に直接お悔やみを伝える |
| 家族葬で参列を辞退された | 現金書留で郵送(葬儀前日着)。または忌明け後に従業員が出社した際に直接渡す |
| 訃報を後から知った | 四十九日前であれば訪問または郵送で対応。時期が過ぎた場合は直接従業員に渡す |
✅ 香典辞退でも「弔意を伝える行動」は必要
香典辞退の場合でも、弔電・供花・声かけ・忌引き休暇の配慮など、弔意を形にする手段は多くあります。金額より「会社として気にかけている」ということが伝わることが大切です。
よくある質問
慶弔規程に明記されていない場合は、会社の判断になります。派遣社員は派遣元(派遣会社)でも弔慰金制度がある場合があるため、重複を避けるため事前確認を。業務委託者への支給は「接待交際費」か「福利厚生費」か判断が分かれることがあるため、税理士に確認するのが安全です。
会社の慶弔規程次第です。多くの規程では「退職後○か月以内」「勤続○年以上」という条件を設けています。規程がない場合は在職期間・退職理由・関係の深さを総合的に判断します。元社員への香典も福利厚生費として処理できます(freee・マネーフォワード等の税務情報で確認)。
領収書がなくても経費処理できます。葬儀では領収書を発行しないのが通常であることを税務署も理解しています。会葬案内状のコピー・弔慰金支給申請書・出金メモのいずれかがあれば証明書類として機能します。摘要欄の記載も補足として有効です。
自社の従業員・役員とその家族への香典は「福利厚生費」、取引先・仕入先・顧客などの社外関係者への香典は「接待交際費」です。これは税務上の区分であり、後者(接待交際費)は法人税の損金算入に上限(交際費課税)がある点で異なります。
弔電は福利厚生費(消費税不課税)、供花は福利厚生費(消費税課税)、参列の交通費は旅費交通費(消費税課税)でそれぞれ処理します。消費税区分が異なるため、仕訳は分けて記録するのが正確です。
会社の創業者・経営層・業務上の死亡など「会社に功績のある人物の葬儀」として社葬を行う場合、葬儀費用の大部分を福利厚生費として損金算入できる場合があります。ただし、故人の会社への貢献度や死亡理由による判断が必要で、全額が認められない場合もあります。社葬を検討する場合は事前に税理士へ確認してください。
手続きチェックリスト(人事・総務担当者向け)
- 故人氏名・続柄・通夜・葬儀の日時場所を確認した
- 宗教宗派・香典辞退の有無を確認した
- 慶弔規程に基づく金額を決定し、承認を取得した
- 宗派に適した香典袋を選択し、正しい表書き・金額記載をした
- 新札を避け、お札の向きを揃えて封入した
- 弔電・供花の手配要否を確認した
- 受付での渡し方(直接参列 or 郵送)を決定した
- 福利厚生費で仕訳し、摘要欄に「相手先・続柄・香典」を記載した
- 会葬案内状コピーまたは申請書を証憑として保管した
- 税務関係書類として7年間保管する準備をした
まとめ:会社の香典対応の要点
- 従業員・役員とその家族への香典=福利厚生費(消費税不課税)。取引先への香典=接待交際費
- 続柄別相場:配偶者・父母・子ども10,000〜30,000円、祖父母・兄弟姉妹5,000〜10,000円が目安
- 10万円超は給与認定リスクあり——金額の根拠を文書で残すこと
- 領収書がなくても会葬案内状・申請書・出金メモで経費処理できる
- 慶弔規程を整備しておくと担当者の判断負担が減り、従業員への説明も一貫する
- 弔電は不課税、供花・交通費は課税——消費税区分に注意して仕訳する
- 家族葬・香典辞退の場合は弔電・郵送・事後の声かけで対応
- 証憑書類(申請書・案内状・仕訳明細)は7年間保管
最終更新:2026年5月|TERASU by 玉泉院 編集部
※税務処理の詳細は税理士にご確認ください
