葬儀費用の相続税控除【完全ガイド】領収書の名義・控除できる費用一覧・お布施の領収書なし対処法・会葬御礼と香典返しの違い

「葬儀費用の領収書は誰の名前でもらえばいい?」「香典返しは控除できる?」「お布施に領収書がないけど大丈夫?」「飲食費は控除できる?できない?」

葬儀後の相続税申告で多くの方が戸惑うのが葬儀費用の扱いです。この記事では①領収書の名義の選び方、②控除できる費用・できない費用の完全一覧(国税庁No.4129準拠)、③「会葬御礼」と「香典返し」の違い、④領収書がないときの対処法、⑤誰が支払うかで変わる節税ポイント、⑥申告書への記載方法、⑦よくある疑問まで解説します。

葬儀費用が相続税から控除できる理由

葬儀費用は故人が亡くなった後に発生する費用で、故人の「借金(債務)」には当たりません。それでも相続税から控除が認められているのは、「相続が発生すると必然的に生じる費用」として、相続税法により特別に控除が認められているからです(相続税法第13条)。

相続税は「正味の遺産額」(プラスの財産からマイナスを差し引いた額)に課税されます。葬儀費用はこのマイナスとして扱われ、遺産総額から差し引いた上で計算します。

💡 控除の効果の目安

遺産総額5,000万円で葬儀費用200万円なら、課税対象は4,800万円になります。葬儀費用をきちんと申告することで節税につながります。なお相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」。遺産総額が基礎控除以下なら相続税はかからず申告不要です。

領収書の名義は「実際に支払った人」が正解

✅ 基本ルール:喪主または支払いをした相続人の名義で発行してもらう

故人はすでに亡くなっているため、故人名義での新たな支払い契約は法的に問題が生じます。葬儀社・火葬場には必ず喪主または実際に支払いをした人の名前で領収書を発行してもらってください。

複数の相続人が費用を分担した場合

支払い方法 領収書の扱い
喪主が全額支払い 喪主名義の領収書を受け取る
複数の相続人が分担して支払い 各自が支払った分を各自の名義で受け取り、全員分を合算して申告
故人の預貯金(遺産)から支払い 引き出しをした相続人の名義で受け取り、申告書の「誰が負担したか」の欄に記載

💡 誰が支払うかで節税効果が変わる場合がある

葬儀費用は相続税の課税対象となる遺産額から控除されます。そのため相続税の課税対象者(課税が見込まれる相続人)が支払うのが税務上有利になる場合があります。逆に相続を放棄する予定の方や、相続税の課税対象でない方が全額支払った場合、その人が控除メリットを受けられません。複雑なケースは税理士にご相談ください。

⚠ 故人の預貯金から支払う場合の注意

故人の預貯金から葬儀費用を支払うことは法的に可能ですが(相続財産の仮払い制度など)、相続放棄を検討している場合は相続財産を処分したとみなされる可能性があります。相続放棄を検討中の場合は弁護士・司法書士に必ず相談してください。

控除できる葬儀費用・できない費用(国税庁No.4129準拠)

✅ 控除できる費用

費用の種類 具体例・補足
葬儀・告別式の基本費用 棺・祭壇・霊柩車・式場使用料・司会進行費用など。仮葬式と本葬式の両方を行った場合は両方が対象
火葬・埋葬・納骨費用 火葬場使用料・骨壺代・埋葬料。四十九日などで後日納骨した費用も対象
遺体・遺骨の搬送費用 病院から自宅・葬儀社・火葬場への搬送費。遠方からの遺体・遺骨の回送費も対象
遺体の安置費用 ドライアイス代・葬儀社や安置施設の使用料
通夜・告別式の飲食費 通夜振る舞い・精進落とし(お斎)の料理代・飲み物代。スーパーやコンビニで購入したものも含む(レシート保管を)
お布施・戒名料・読経料 寺院・神社・教会へのお布施・読経料・戒名料・神式のお礼など。領収書がなくてもメモで対応可
会葬御礼(当日に全参列者へ渡すもの) 香典の有無にかかわらず、告別式当日に参列者全員に渡す会葬御礼品(タオル・お茶等)は控除対象。いわゆる「当日返し(即日返し)」も含む
霊柩車運転手や葬儀スタッフへの心付け 社会通念上相当な範囲であれば対象。領収書なし→出金伝票で対応
白木位牌(仮位牌)の費用 葬儀で使用する白木位牌は対象。本位牌は対象外
死亡診断書の取得費用 火葬許可証の取得に必要なため対象
互助会費の充当分 故人または喪主が生前に積み立てた互助会費を葬儀費用に充当した金額が対象。ただし返戻金は相続財産として申告が必要
喪主・施主が負担した生花・供物代 喪主側が費用を負担した生花・花輪・果物。会葬者が出した花輪代は対象外
遺体を捜索するための費用 事故・行方不明等で遺体捜索が必要だった場合の費用

❌ 控除できない費用

費用の種類 理由・補足
香典返しの費用 香典自体が非課税の収入のため、そのお返しも控除不可。会葬御礼とは異なる(後述)
墓石・墓地の購入費用 墓地・仏壇・仏具は相続税の非課税財産。関連費用は控除不可
四十九日以降の法事・法要の費用 初七日・四十九日・一周忌などの法事費用は対象外(葬儀当日に行う繰り上げ初七日は要確認)
法要での飲食費 四十九日・一周忌などの法要後の食事代は対象外。通夜振る舞いとは異なる
本位牌の費用 葬儀後に作成する本位牌は対象外(白木位牌は対象)
仏壇・仏具の購入費用 日常の礼拝用財産として非課税財産のため対象外
遺族の交通費・宿泊費 遺族が葬儀に参列するための交通費・宿泊費は対象外
遺体の解剖費用 医学上・裁判上の特別な処理費用は葬式と関連がないため対象外
生前に購入した墓地・仏壇の費用 生前購入した非課税財産と同じ扱い

⚠ 「飲食費は控除不可」という情報は誤りです

一部のサイトや古い情報では「飲食費は対象外」と書かれている場合がありますが、通夜振る舞い・精進落としの飲食費は国税庁No.4129により控除対象です。ただし四十九日以降の法事での飲食費は対象外のため混同しないよう注意してください。

【重要】会葬御礼と香典返しの違い——どちらが控除できるか

一番混乱しやすいのが「会葬御礼」と「香典返し」の違いです。この2つは全く別のものです。

名称 渡す相手・タイミング 内容の例 相続税控除
会葬御礼 葬儀・告別式の当日、参列した全員に(香典の有無を問わない) タオル・お茶・会葬礼状など500〜1,000円程度のもの ✅ 控除できる
当日返し(即日返し) 香典をいただいた方に当日その場で渡すお返し カタログギフト・お菓子など2,000〜3,000円程度のもの ✅ 控除できる(会葬御礼の一形態として)
香典返し 香典をいただいた方に、四十九日後に改めて渡すお返し タオル・カタログギフトなど香典額の半額程度のもの ❌ 控除できない

💡 なぜ会葬御礼は控除できて香典返しはできないのか

会葬御礼は「葬儀に参列してくれた全員へのお礼」であり、葬式の費用の一部です。一方、香典は参列者からの「贈与」として非課税扱いになります。非課税の収入(香典)に対するお返し(香典返し)を控除してしまうと、課税上のバランスが崩れるため、香典返しは控除対象外とされています。

領収書がない場合の対処法

お布施・心付けに領収書がない場合

寺院・神社・教会はお布施の領収書を発行しないのが一般的です。この場合は出金伝票(市販品)または手書きのメモを作成することで、税務上の証拠として認められます。

✅ 出金伝票・メモに記録すべき5つの内容

  • 支払った日付
  • 支払い先(寺院名・神社名など)
  • 支払いの内容(お布施・読経料・戒名料・心付けなど)
  • 支払った金額
  • 支払った人の名前

出金伝票は文具店・100円ショップで購入できます。手書きでも問題ありません。

スーパー・コンビニのレシートでも有効か

通夜振る舞いや精進落としのためにスーパー・コンビニで購入した食材・飲み物のレシートも、葬儀費用の証明として使用できます。購入日・品目・金額が確認できるものであれば有効です。

領収書を紛失した場合

葬儀社に再発行を依頼するか、「支払証明書」として発行してもらえるか確認してください。葬儀社は大半の場合、詳細な明細書を保管しています。金額が小さいものはメモでの代用も可能です。

相続税申告書への記載方法(第13表)

葬儀費用は相続税申告書の「第13表 債務及び葬式費用の明細書」の「葬式費用の明細」欄に記載します。

1

支払先・内容・金額を記入する

「支払先の名称」「所在地」「支払年月日」「金額」を費用ごとに記載。金額が小さいものは「その他」にまとめて可

2

誰が負担したかを記入する

費用を負担した相続人の氏名と負担額を記載。複数の相続人が分担した場合はそれぞれの氏名と負担額を記入する

3

領収書・証拠書類のコピーを添付する

領収書・明細書のコピーを提出(原本ではなくコピーでOK)。メモ・出金伝票の場合はそのコピーを添付する

領収書・証拠書類の保管チェックリスト

  • 葬儀社からの請求書・領収書(項目別内訳が記載されたもの)
    内訳明細があると申告がスムーズ。発行してもらえる場合は必ず受け取る
  • 火葬場の使用料領収書
    公営火葬場は窓口で領収書を発行
  • お布施の受領証または出金伝票・メモ
    寺院は領収書を発行しないことが多い。出金伝票(文具店で購入可)に記録して保管
  • 通夜振る舞い・精進落としの領収書・レシート
    料理店・仕出し屋への支払い領収書。スーパー・コンビニのレシートも有効
  • 遺体搬送費用の領収書
    病院・施設からの搬送費用。深夜・早朝割増分も含む
  • 死亡診断書の取得費用の領収書
    病院の窓口で発行される費用
  • 会葬御礼・心付けの領収書またはメモ
    葬儀社経由で手配した場合は請求書に含まれていることが多い
  • 互助会からの精算書(互助会を利用した場合)
    充当額と返戻金額がわかる書類

✅ 保管期間:相続税申告後5年間(悪質な場合は7年間)

税務調査は申告から5年以内に行われる可能性があります(仮装・隠ぺいがあった場合は7年)。申告後も5年間は必ず保管してください。

よくある質問

Qお布施の領収書が出ない場合はどうすればいいですか?

寺院・神社・教会はお布施の領収書を発行しないのが一般的です。その場合は出金伝票(市販品)または手書きのメモを作成してください。記載すべき内容は「支払日・支払先・内容(お布施・読経料・戒名料)・金額・支払者の名前」の5点です。税務調査でも証拠として認められます。

Q通夜振る舞いや精進落としの食事代は控除できますか?

はい、控除できます。国税庁No.4129「お通夜などにかかった費用」として明確に控除対象です。スーパーやコンビニで購入した食材・飲み物のレシートも証拠として使えます。ただし四十九日・一周忌などの法事での食事代は対象外です。

Q会葬御礼(タオルなど)と香典返しは何が違いますか?両方控除できますか?

異なります。会葬御礼は葬儀当日に参列した全員(香典の有無を問わず)に渡すもので、控除対象です。香典返しは香典をいただいた方に後日(または即日)渡すお返しで、控除対象外です。最近増えた「当日返し(即日返し)」——香典受領時にその場でお返しを渡すスタイル——は会葬御礼の一形態として控除対象とされています。

Q繰り上げ初七日(葬儀当日に行う初七日)の費用は控除できますか?

税理士によって判断が分かれる部分です。葬儀と一体として行われる繰り上げ初七日の費用は控除できるという考え方もありますが、明確な法的ルールがなく、担当税理士に確認することをお勧めします。

Q白木位牌と本位牌、どちらが控除できますか?

葬儀で使用する白木位牌(仮位牌)は控除対象です。葬儀社の明細書に記載されていることが多いです。葬儀後に作成する本位牌は控除対象外です。

Q相続税がかかるか分からないが、領収書は保管すべきか?

はい、必ず保管してください。相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるかどうかは、全財産を把握しないと分かりません。葬儀直後は財産の全体像が見えにくいため、後で控除対象かどうか判断できるよう、領収書・レシートはすべて保管しておくことが安全です。

Q互助会費を充当した場合の扱いは?

故人または喪主が生前に積み立てた互助会費を葬儀費用に充当した場合、充当した金額を葬式費用として控除できます。互助会から返戻金(解約返戻金・差額返戻金)がある場合は、その返戻金は相続財産として申告が必要です。互助会から精算書を受け取り、充当額と返戻金額を確認してください。

Q遺体の解剖費用は控除できますか?

控除できません。遺体の解剖費用(医学上・裁判上の特別な処理)は、葬式と直接関連しない費用として控除対象外とされています(国税庁No.4129に明記)。

この記事のまとめ

  • 領収書は実際に支払った人(喪主または相続人)の名義で受け取る
  • 複数人が分担した場合は各自の名義で受け取り合算して申告。課税対象者が支払うと節税効果が大きい
  • 控除できる主な費用:葬儀基本費用・火葬費・遺体搬送費・通夜振る舞い・精進落としの飲食費・お布施・会葬御礼・心付け・白木位牌・死亡診断書代・互助会充当分
  • 控除できない費用:香典返し・墓石・墓地・本位牌・仏壇・法事費用・遺族の交通費・遺体解剖費用
  • 会葬御礼(全参列者に当日渡す)は控除OK。香典返し(香典への個別お返し)は控除NG
  • お布施に領収書がなければ出金伝票またはメモを作成して保管(5項目を記録)
  • 申告書は第13表(債務及び葬式費用の明細書)に記載し、領収書コピーを添付
  • 領収書類は申告後5年間(悪質な場合は7年間)保管する

参照:国税庁タックスアンサーNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」・相続税法第13条
最終更新:2026年6月|TERASU by 玉泉院 編集部
※個別案件については税理士にご相談ください。

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