「葬儀費用の領収書は誰の名前でもらえばいい?」「香典返しは控除できる?」「お布施に領収書がないけど大丈夫?」
葬儀後の手続きで多くの方が戸惑うのが、相続税申告における葬儀費用の扱いです。この記事では①領収書の名義の選び方、②控除できる費用・できない費用の一覧、③領収書がないときの対処法、④申告書への記載方法、⑤よくある疑問まで、国税庁の公式情報をもとにわかりやすく解説します。
まず知っておきたい:葬儀費用はなぜ相続税から控除できるのか
葬儀費用は、故人が亡くなった後に発生する費用であり、厳密には故人の「借金(債務)」には当たりません。それでも相続税から控除が認められているのは、「相続が発生すると必然的に生じる費用」だからです。
相続税の仕組みでは、プラスの財産(預貯金・不動産など)からマイナスの財産(借金・未払金)を差し引いた「正味の遺産額」に課税されます。葬儀費用はこのマイナスとして扱われ、遺産総額から差し引いた上で相続税を計算します。
💡 控除の効果のイメージ
遺産総額が5,000万円で葬儀費用が200万円だった場合、課税対象は5,000万円 − 200万円 = 4,800万円になります。葬儀費用をきちんと申告することで、相続税の節税につながります。
※相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)もあります。遺産総額が基礎控除以下の場合は相続税自体がかかりません。
領収書の名義は「実際に支払った人(喪主または相続人)」が正解
📋 基本ルール
葬儀費用の領収書は、実際にお金を支払った人の名前(喪主または相続人)で発行してもらうのが原則です。
故人はすでに亡くなっているため、故人名義での新たな契約・支払いは法的に問題が生じます。葬儀社や火葬場には必ず喪主または支払者の名前で領収書を発行してもらってください。
複数の相続人が費用を分担した場合
兄弟姉妹など複数の相続人が葬儀費用を分担して支払った場合は、それぞれが支払った分の領収書をそれぞれの名義で受け取り、合算して申告します。
| 支払い方法 | 領収書の扱い |
|---|---|
| 喪主が全額支払い | 喪主名義の領収書を受け取る |
| 複数の相続人が分担して支払い | 各自が支払った分を各自の名義で受け取り、全員分を合算して申告 |
| 故人の預貯金(遺産)から支払い | 支払った相続人の名義で受け取り、申告書の「誰が負担したか」の欄に記載 |
⚠ 故人の預貯金から支払った場合の注意
故人の預貯金から葬儀費用を支払うことは法的に可能です(相続財産の仮払い制度など)が、相続放棄を検討している場合は相続財産を処分したとみなされる可能性があります。相続放棄を検討中の場合は弁護士・司法書士にご相談ください。
相続税から控除できる葬儀費用・できない費用(国税庁基準)
国税庁のタックスアンサー(No.4129)および相続税法基本通達に基づいて整理します。
✅ 控除できる費用
| 費用の種類 | 具体例・補足 |
|---|---|
| 葬儀・告別式の基本費用 | 棺・祭壇・霊柩車・式場使用料・司会進行費用など。仮葬式と本葬式の両方を行った場合は両方とも対象 |
| 火葬・埋葬・納骨費用 | 火葬場使用料・骨壺代・埋葬料。四十九日などで後日納骨した場合でも対象 |
| 遺体・遺骨の搬送費用 | 病院から自宅・葬儀社・火葬場への搬送費用。遠方からの遺体・遺骨の回送費用 |
| 遺体の安置費用 | ドライアイス代・葬儀社や安置施設の使用料 |
| 通夜・告別式の飲食費 | 通夜振る舞い・精進落とし(お斎)の料理代・飲み物代。スーパーやコンビニで購入したものも含む(レシート保管を) |
| お布施・戒名料・読経料 | 寺院・神社・教会へのお布施・読経料・戒名料・神式のお礼など |
| 会葬御礼・心付け | 葬儀当日に参列者に渡す会葬御礼(香典の有無にかかわらず対象)。霊柩車運転手や葬儀スタッフへの心付け |
| 白木位牌(仮位牌)の費用 | 葬儀で使用する白木位牌は対象。本位牌は対象外 |
| 死亡診断書の取得費用 | 火葬許可証の取得に必要なため対象 |
| 互助会費の充当分 | 故人または喪主が生前から積み立てた互助会費を充当した場合、充当した金額が対象(返戻金は相続財産として計上) |
| 生花・花輪(喪主・施主負担分) | 喪主・施主が負担した生花・花輪・果物などの供物代。会葬者が出した花輪代は対象外 |
❌ 控除できない費用
| 費用の種類 | 理由・補足 |
|---|---|
| 香典返しの費用 | 香典自体に相続税がかからないため、そのお返しも控除不可 |
| 墓石・墓地の購入費用 | 墓地・仏壇・仏具は相続税の非課税財産。関連費用は控除不可 |
| 四十九日以降の法事・法要の費用 | 初七日・四十九日・一周忌などの法事費用は対象外。ただし「繰り上げ初七日」として葬儀当日に行った場合は対象になる場合がある(税理士に確認を) |
| 本位牌の費用 | 葬儀後に作成する本位牌は対象外(白木位牌は対象) |
| 仏壇・仏具の購入費用 | 日常の礼拝用財産として相続税非課税財産のため対象外 |
| 法要での飲食費 | 四十九日・一周忌などの法要後の食事代は対象外 |
| 遺族の交通費・宿泊費 | 遺族が葬儀に参列するための交通費・宿泊費は対象外 |
⚠ 旧記事などで「飲食費は控除不可」と書かれている場合は誤りです
通夜・告別式での飲食費(通夜振る舞い・精進落とし)は、国税庁No.4129「お通夜などにかかった費用」として控除対象です。ただし四十九日以降の法事での飲食費は対象外です。混同しないよう注意してください。
領収書がない場合の対処法
お布施・心付けに領収書がない場合
寺院・神社・教会はお布施の領収書を発行しないのが一般的です。この場合は「出金伝票」または手書きのメモを作成することで、税務上の証拠として認められます。
✅ 出金伝票・メモに記録すべき内容
- 支払った日付
- 支払い先(寺院名・神社名など)
- 支払いの内容(お布施・読経料・戒名料など)
- 支払った金額
- 支払った人の名前
出金伝票は文具店や100円ショップで購入できます。手書きでも問題ありません。
スーパー・コンビニのレシートでも有効か
通夜振る舞いや精進落としで、スーパーやコンビニエンスストアで食材・飲み物を購入した場合のレシートも葬儀費用の証明として使用できます。購入日・購入品・金額が確認できるものであれば有効です。
金額が小さいものはまとめて記載できる
相続税申告書(第13表)では、金額が小さい費用はまとめて「その他」として記載することができます。ただし個別の領収書・メモは保管しておいてください。
相続税申告書への記載方法(第13表)
葬儀費用は相続税申告書の「第13表 債務及び葬式費用の明細書」の「葬式費用の明細」欄に記載します。
支払先・内容・金額を記入する
「支払先の名称」「所在地」「支払年月日」「金額」を費用ごとに記載。金額が小さいものは「その他」にまとめて可
誰が負担したかを記入する
費用を負担した相続人の氏名と負担額を記載。複数の相続人が分担した場合はそれぞれの氏名と負担額を記入
領収書のコピーを添付する
申告書と一緒に領収書・明細書のコピーを提出(原本ではなくコピーでOK)。メモ・出金伝票の場合はそのコピーを添付
領収書・証拠書類の保管チェックリスト
- 葬儀社からの請求書・領収書(全項目の内訳が記載されたもの) 内訳明細があると申告がスムーズ。発行してもらえる場合は明細書も受け取る
- 火葬場の使用料領収書 公営火葬場は窓口で領収書を発行
- お布施の受領証または出金伝票・メモ 寺院は領収書を発行しないことが多い。出金伝票を自作して保管
- 通夜振る舞い・精進落としの領収書・レシート 料理店・仕出し屋への支払い領収書。スーパー・コンビニのレシートも有効
- 遺体搬送費用の領収書 病院・施設からの搬送費用
- 死亡診断書の取得費用の領収書 病院の窓口で発行される費用の領収書
- 会葬御礼・心付けの領収書またはメモ 葬儀社経由で手配した場合は請求書に含まれていることが多い
- 互助会からの精算書(互助会を利用した場合) 充当額と返戻金額がわかる書類
✅ 保管期間:相続税申告後5年間(悪質な場合は7年間)
税務調査は相続税申告から5年以内に行われる可能性があります(仮装・隠ぺいがあった場合は7年)。申告後も5年間は必ず保管してください。
よくある質問
寺院・神社・教会はお布施の領収書を発行しないのが一般的です。その場合は出金伝票(市販品)または手書きのメモを作成してください。記載すべき内容は「支払日・支払先・内容(お布施・読経料・戒名料)・金額・支払者の名前」の5点です。税務上の証拠として認められます。
はい、控除できます。国税庁のタックスアンサー(No.4129)では「お通夜などにかかった費用」として明確に控除対象に含まれています。スーパーやコンビニで購入した食材・飲み物のレシートも使えます。ただし四十九日や一周忌などの法事での食事代は対象外です。
できません。香典は故人や遺族への弔意として受け取るもので、相続税の課税対象外です。そのため、そのお返しである香典返しの費用も控除対象外となります。
この点は税理士によって判断が分かれる場合があります。葬儀と一体として行われる繰り上げ初七日は控除できるという考え方もありますが、明確なルールがないため、担当税理士にご確認ください。
葬儀で使用する白木位牌(仮位牌)は控除対象です。葬儀社の明細書に記載されていることが多いです。一方、葬儀後に作成する本位牌は控除対象外です。
はい、必ず保管してください。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で、遺産総額がこれを下回れば申告不要です。ただし財産の全体像は葬儀直後には把握しにくいため、控除対象になるかどうか後から判断できるよう、領収書類はすべて保管しておくのが安全です。
故人または喪主が生前に積み立てた互助会費を葬儀費用に充当した場合、充当した金額を葬式費用として控除できます。互助会から返戻金(解約返戻金・差額返戻金)がある場合は、その返戻金は相続財産として申告が必要です。互助会から精算書を受け取り、充当額と返戻金額を確認してください。
この記事のまとめ
- 領収書は実際に支払った人(喪主または相続人)の名義で受け取る
- 複数人が分担した場合は各自の名義で受け取り、合算して申告
- 控除できる主な費用:葬儀基本費用・火葬費・遺体搬送費・通夜振る舞い・精進落としの飲食費・お布施・会葬御礼・心付け・白木位牌・死亡診断書代・互助会充当分
- 控除できない費用:香典返し・墓石・墓地・本位牌・仏壇・法事費用・遺族の交通費
- 通夜振る舞い・精進落としの飲食費は控除対象(国税庁No.4129)。四十九日以降の法事の飲食費は対象外
- お布施に領収書がない場合は出金伝票またはメモを作成して保管
- 申告書は第13表(債務及び葬式費用の明細書)に記載し、領収書コピーを添付
- 領収書類は相続税申告後5年間保管する
最終更新:2026年5月|TERASU by 玉泉院 編集部・税理士監修
※本記事は国税庁No.4129および相続税法基本通達に基づき作成。個別案件については税理士にご相談ください。

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