扶養家族が亡くなった後の健康保険手続き完全ガイド|制度別の期限・給付金・チェックリスト

扶養していたご家族を亡くされた後、健康保険の手続きを放置してしまうと、保険料の過払いや給付金の受け取り忘れにつながることがあります。この記事では①制度別の手続き一覧と期限、②受け取れる給付金、③申請に必要な書類、④よくある疑問を、実際の制度に基づいて整理しました。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。個別の状況については、各保険者・社会保険労務士にご相談ください。

手続きの全体像——制度・期限・給付金

保険制度 主な手続き 期限 受け取れる給付金
協会けんぽ・健保組合
(会社員の扶養家族)
被扶養者異動届・保険証返却 5日以内 家族埋葬料(一律5万円)
国民健康保険
(自営業者・無職など)
資格喪失届・保険証返却 14日以内 葬祭費(1〜7万円程度・自治体により異なる)
後期高齢者医療制度
(75歳以上)
資格喪失届・保険証返却 14日以内 葬祭費(2〜7万円程度・広域連合により異なる)
全制度共通 高額療養費・療養費の申請 2年以内 実際に超過した医療費に応じた還付

⚠ 保険の種類を先に確認してください

手続き内容は、故人が加入していた保険制度によって異なります。保険証に記載されている保険者名(「全国健康保険協会」「○○健康保険組合」「○○市国民健康保険」「後期高齢者医療」)で確認できます。

協会けんぽ・健康保険組合の場合(会社員の扶養家族)

①被扶養者異動届の提出(死亡日から5日以内)

扶養家族が亡くなった場合、被保険者(会社員本人)が勤務先の担当者(人事・総務部門)に速やかに連絡し、会社経由で被扶養者異動届を提出します。個人が直接年金事務所に持参するケースは少なく、基本的には事業主を通じた提出が原則です。

必要な書類

  • 健康保険被扶養者(異動)届(会社から入手、または日本年金機構サイトからダウンロード)
  • 亡くなった方の健康保険被保険者証
  • 死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー、戸籍謄本・除籍謄本等)

マイナンバーと続柄の記載・確認ができている場合は、続柄証明書類が省略できる場合があります。

⚠ 届出が遅れた場合の影響

届出が遅れた場合でも、死亡日の翌日に遡って扶養解除の処理が行われます。遅延の間に亡くなった方の保険証が使用された場合(誤使用を含む)、その医療費の保険負担分の返還が求められることがあります。

②家族埋葬料の申請(死亡日から2年以内)

協会けんぽ・健康保険組合に加入する被保険者(会社員)の被扶養家族が亡くなった場合、被保険者本人が家族埋葬料(5万円)を受け取れます。

申請に必要な書類

  • 健康保険埋葬料(費)支給申請書(協会けんぽ:協会けんぽ各支部・日本年金機構へ、健保組合:組合へ)
  • 死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー等)
  • 事業主の証明欄への記入(申請書内)
  • 振込口座の情報

✅ 健康保険組合加入の場合は付加給付を確認

健康保険組合によっては、法定の5万円に加えて独自の付加給付(1〜3万円程度)を設けている場合があります。勤務先の健康保険組合のパンフレットや担当者に確認してください。弔慰金・特別見舞金等の名称で別途給付がある組合もあります。

国民健康保険の場合(自営業者・無職の方など)

国民健康保険には「扶養」という概念がなく、亡くなった方は各自が独立して国民健康保険に加入していたことになります。

①国民健康保険資格喪失届(死亡日から14日以内)

手続き先・必要書類

  • 提出先:故人の住所地の市区町村役場(国民健康保険担当窓口)
  • 国民健康保険資格喪失届(窓口で入手)
  • 亡くなった方の保険証
  • 死亡診断書または死体検案書のコピー
  • 手続きをする方の本人確認書類

市区町村によっては死亡届の受理をもって自動的に処理される場合があります。事前に窓口に確認してください。

②葬祭費の申請(葬儀を行った日から2年以内)

国民健康保険の被保険者が亡くなった場合、葬儀を行った方(喪主など)が葬祭費を受け取れます。支給額は自治体によって異なります。

自治体例 葬祭費の支給額
東京都23区 7万円(区により異なる場合あり)
横浜市・大阪市・名古屋市 5万円(目安)
その他の市区町村 1万円〜7万円(自治体により異なる)

※支給額は改定される場合があります。申請前にお住まいの市区町村役場に確認してください。

後期高齢者医療制度の場合(75歳以上)

75歳以上の方は後期高齢者医療制度に単独で加入しているため、家族の健康保険の扶養には入れません。亡くなった場合は以下の手続きが必要です。

必要な手続き(死亡日から14日以内)

  • 被保険者資格喪失届の提出(住所地の市区町村窓口)
  • 後期高齢者医療被保険者証の返納
  • 葬祭費の申請(各都道府県後期高齢者医療広域連合により2〜7万円程度)

全制度共通——高額療養費の確認・申請

亡くなる前に入院・通院をしていた場合、高額療養費制度の対象となっている可能性があります。申請期限は診療月の翌月1日から2年以内です。

高額療養費とは

1か月(1日〜末日)の医療費自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、超えた分が後から返還される制度です。入院費が高額になった月だけでなく、外来の合算も含めて確認してください。

💡 高額療養費の確認ポイント

亡くなる前の入院が長期にわたっていた場合、複数の月にわたって高額療養費の申請ができることがあります。また、同一世帯の複数人の医療費を合算して上限を超えていないかも確認します(世帯合算)。加入していた健康保険の窓口に「高額療養費の確認をしたい」と申し出れば、対象かどうか確認してもらえます。

手続きの優先順位と期限一覧

時期の目安 手続き 期限 対象制度
死亡後すぐ 死亡診断書の取得(複数部)・死亡届の提出 死亡後7日以内 全員共通
同週中 被扶養者異動届・保険証返却(会社員の場合) 事由発生から5日以内 協会けんぽ・健保組合
2週間以内 資格喪失届・保険証返却 14日以内 国民健康保険・後期高齢者医療
葬儀後〜1か月以内 家族埋葬料・葬祭費の申請 2年以内 全制度(制度により名称が異なる)
落ち着いたら 高額療養費・療養費の確認・申請 2年以内 全制度

手続きチェックリスト

  • 死亡診断書の取得(複数部)
    各種手続きのコピー提出用に5〜10部程度
  • 死亡届の提出(7日以内)
    市区町村役場へ。火葬許可証の取得も同時に行う
  • 被扶養者異動届の提出(5日以内)
    協会けんぽ・健保組合の場合。会社の担当者に連絡して進める
  • 保険証の返却
    亡くなった方の保険証を確実に回収し、手続きと合わせて返却する
  • 国民健康保険/後期高齢者医療 資格喪失届(14日以内)
    該当する場合のみ。住所地の市区町村窓口へ
  • 家族埋葬料・葬祭費の申請
    埋葬を行った後に申請。忘れやすいので葬儀後に早めに手配する
  • 高額療養費の確認・申請
    亡くなる前の医療費が高額だった場合。加入先保険者の窓口に確認
  • 健保組合の付加給付・独自給付の確認
    健康保険組合加入の場合のみ。組合のパンフレット・担当者に確認

よくある質問

Q
被扶養者異動届は直接年金事務所に持参すればいいですか?

会社に勤めている方(被保険者)の場合は、基本的に勤務先の担当者(人事・総務)を通じて提出するのが一般的です。まずは会社に連絡してください。

個人で直接提出できる場合(自営業者など特殊なケース)もありますが、協会けんぽの場合は事業主経由が原則となっています。健康保険組合の場合も組合に確認してください。

Q
5日以内という期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?

期限を過ぎても、速やかに手続きを行えば問題なく処理されます。届出が遅れた場合でも、死亡日の翌日に遡って扶養解除が処理されます。

ただし、遅延の間に亡くなった方の保険証が誤って使用された場合は、その医療費の返還を求められることがあります。気づいた時点で速やかに会社担当者に連絡してください。

Q
埋葬料と葬祭費、両方もらうことはできますか?

いいえ、どちらか一方のみです。亡くなった方が加入していた保険制度によって受け取れる給付が決まります。

協会けんぽ・健保組合の被扶養者だった場合は家族埋葬料(5万円)、国民健康保険・後期高齢者医療の被保険者だった場合は葬祭費が対象です。重複して受け取ることはできません。

Q
保険証が見つかりません。手続きは進められますか?

はい、保険証がなくても手続きは進められます。その場合は「保険証紛失により返納不可」の旨を記載して届出を行います。会社の担当者または保険者の窓口に事情を伝えれば対応してもらえます。

なお、万が一後で保険証が見つかった場合でも、死亡日以降は保険証の効力は失われていますので使用しないでください。

Q
75歳以上の親を会社の健康保険の扶養に入れていましたが、手続きはどうなりますか?

75歳以上の方は後期高齢者医療制度に強制加入となるため、会社の健康保険の扶養には入れません。実際には後期高齢者医療制度の被保険者として手続きが必要です。

後期高齢者医療制度の手続きは住所地の市区町村窓口で行い、葬祭費(広域連合によって金額が異なります)を申請できます。

Q
高額療養費の申請を忘れていた場合はどうなりますか?

高額療養費の申請期限は診療月の翌月1日から2年以内です。期限内であればいつでも申請できます。加入していた保険者の窓口(協会けんぽの支部、健保組合、市区町村の国保窓口など)に連絡して申請方法を確認してください。

2年を過ぎると時効により請求権が消滅しますので、高額な医療費が発生していた場合は早めに確認することをお勧めします。

Q
手続きがわからない場合、どこに相談すればよいですか?

保険の種類によって相談窓口が異なります。

協会けんぽ:全国健康保険協会の各都道府県支部(または勤務先の人事・総務担当者)
健康保険組合:各健康保険組合の給付担当窓口
国民健康保険:住所地の市区町村役場の国保担当窓口
後期高齢者医療:住所地の市区町村役場または各都道府県後期高齢者医療広域連合

複数の手続きが絡む場合や、手続きが複雑な場合は社会保険労務士(「おくやみ相談」として対応している事務所もあります)への相談も選択肢のひとつです。

まとめ:扶養家族が亡くなった後の健康保険手続き

  • まず保険証で保険の種類(協会けんぽ・健保組合・国民健康保険・後期高齢者医療)を確認する
  • 協会けんぽ・健保組合:事由発生から5日以内に被扶養者異動届。会社担当者経由が基本
  • 国民健康保険・後期高齢者医療:14日以内に市区町村窓口で資格喪失届
  • 給付金:家族埋葬料(5万円・協会けんぽ等)または葬祭費(国保等・自治体により異なる)を忘れず申請(2年以内)
  • 健康保険組合の場合は付加給付・独自給付も確認する
  • 医療費が高額だった場合は高額療養費の申請も確認(2年以内)
  • 期限を過ぎた場合でも速やかに手続きすれば遡って処理される(埋葬料等の2年の時効には注意)

最終更新:2026年5月|TERASU by 玉泉院 編集部
※本記事は一般的な制度情報の案内です。個別状況は各保険者・社会保険労務士にご相談ください。