突然届く、大切なご友人の訃報。
深い悲しみとともに、「すぐにでも駆けつけたい」という気持ちでいっぱいになることでしょう。しかし、遠方であったり、どうしても都合がつかなかったりと、お通夜や告別式に参列できないことも少なくありません。
そんな時、あなたの深い哀悼の意を伝え、ご遺族の心を慰めることができるのが「弔電」です。
とはいえ、いざ弔電を送るとなると、
「どんな文章を書けばいいのだろう…」
「マナー違反にならないか不安…」
「そもそも、どうやって送ればいいの?」
と、戸惑ってしまう方がほとんどです。
長年、葬祭ディレクターとして数多くのご葬儀をお手伝いしてきた中で、心のこもった弔電が、ご遺族にとってどれほどの慰めになるかを目の当たりにしてきました。その一方で、マナーを知らなかったために、意図せずご遺族を傷つけてしまうケースも残念ながら存在します。
この記事では、葬儀のプロとして、友人へ送る弔電の基本マナーから、あなたの気持ちがまっすぐに伝わる具体的な文例まで、誰が読んでも分かるように丁寧に解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたはもう弔電で迷うことはありません。故人を偲ぶ温かい気持ちを、確かな形でご遺族のもとへ届けることができるようになります。
まずは落ち着いて。弔電を送る前に押さえるべき5つの基本マナー
弔電は、単なる電報ではありません。故人への最後のメッセージであり、ご遺族の心を支える大切な贈り物です。気持ちが焦るあまりマナーを欠いてしまわないよう、まずは基本をしっかりと押さえましょう。
1. いつ、どこに送る?タイミングと宛先
弔電は、お通夜や告別式で読み上げられるのが一般的です。そのため、告別式の開始前、できればお通夜が始まるまでに届くように手配するのが最も丁寧なタイミングです。遅くとも告別式が始まる数時間前には届くようにしましょう。
- 宛先: 斎場やセレモニーホールなど、ご葬儀が執り行われる場所に直接送ります。
- 宛名: ご遺族の代表である**「喪主」のお名前**で送るのが基本です。もし喪主のお名前が分からない場合は、「(故人様名) ご遺族様」とします。
【プロの視点】
万が一、告別式に間に合わなかった場合は、弔電を送るのではなく、後日改めてお悔やみのお手紙をお送りするか、ご自宅へ弔問に伺う方が丁寧な対応となります。ご自宅へ弔電を送ることも可能ですが、ご葬儀後のご遺族は心身ともに疲弊されているため、タイミングには十分な配慮が必要です。
2. 差出人と受取人の敬称、正しく使えていますか?
弔電では、故人やご遺族に対する敬称の使い方が非常に重要です。
相手 | 敬称の例 |
故人(喪主から見た続柄) | ご尊父様・お父様(父)、ご母堂様・お母様(母)、ご主人様・ご夫君様(夫)、ご令室様・奥様(妻)、ご子息様・ご長男様(息子)、ご令嬢様・ご息女様(娘) |
受取人(喪主) | 様 |
ご遺族 | ご遺族の皆様、ご家族の皆様 |
友人本人(故人)の訃報の場合、弔電は喪主(例えば、友人の配偶者や親御様)宛に送ります。そのため、文面では故人のことを「〇〇(友人の名前)様」や「〇〇さん」と呼んでも差し支えありませんが、より丁寧にする場合は、喪主から見た故人の続柄に合わせた敬称(例:ご主人様、ご令室様)を使うと良いでしょう。
3. どこで申し込む?主要電報サービス比較
弔電は、さまざまなサービスを利用して送ることができます。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合ったものを選びましょう。
サービス名 | 特徴 | 料金の目安(税抜) |
NTT(D-MAIL) | 最も一般的で信頼性が高い。全国どこへでも届けられる。Webサイトから24時間申し込み可能。 | 台紙代(無料〜)+文字料金(25文字まで720円〜) |
郵便局(レタックス) | 手書きの文章やイラストをそのまま送れるのが最大の特徴。温かみが伝わる。 | 基本料金(500円〜)+台紙代(無料〜) |
インターネット電報 | VERY CARD、でんぽっぽ等。比較的安価で、デザイン性の高い台紙が多い。法人利用にも強い。 | 1,500円〜3,000円程度(文字料金込み) |
【プロの視点】
急いでいる場合は、配達締切時間が遅いインターネット電報が便利です。デザインにこだわりたい、少しでも費用を抑えたいという場合もインターネット電報が選択肢になります。一方、格式や確実性を最も重視するならNTTが安心です。手書きのメッセージで温かみを伝えたいなら郵便局のレタックスが唯一無二の選択肢となります。
4. これはNG!弔電で使ってはいけない「忌み言葉」
お悔やみの場では、不幸が続くことを連想させたり、不吉な印象を与えたりする「忌み言葉」を避けるのが鉄則です。無意識に使ってしまわないよう、事前に確認しておきましょう。
- 重ね言葉: 重々、くれぐれも、たびたび、またまた → 不幸が重なることを連想させる
- 繰り返す言葉: 再び、追って、続く → 同様に、不幸の繰り返しを想起させる
- 直接的な表現: 死亡、急死、生きていた頃 → ご逝去、急逝、ご生前
- 不吉な言葉: 消える、浮かばれない、迷う
- 宗教・宗派に関する言葉: 仏教用語(成仏、冥福、供養など)は、キリスト教や神式の葬儀では使いません。宗派が分からない場合は、「安らかなお眠りをお祈りいたします」といった表現が無難です。
5. 差出人情報は明確に
弔電を受け取ったご遺族が「どなたからの弔電か」をすぐに把握できるよう、差出人情報は詳しく記載します。
- 氏名(フルネーム)
- 故人との関係性(例:大学時代の友人、〇〇株式会社 元同僚)
- 住所または所属団体名
- 電話番号
友人グループなど連名で送る場合は、全員の氏名を記載します。人数が多い場合は「〇〇大学有志一同」のようにまとめ、代表者の連絡先を明記すると丁寧です。
心からの想いを伝える 友人への弔電文例30選
ここからは、具体的な文例を、故人との関係性や状況に合わせて30種類ご紹介します。文例をベースに、ご自身の言葉で故人との思い出などを加えると、より一層気持ちの伝わる弔電になります。
【突然の訃報に】驚きと悲しみを伝える文例 (5選)
突然の知らせに、言葉を失うほどの衝撃と深い悲しみを伝える文例です。
- ごくシンプルな文例〇〇様の突然の悲報に接し、ただただ驚いております。ご遺族の皆様のお悲しみはいかばかりかとお察しいたします。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
- 信じられない気持ちを表現する文例〇〇さんのご逝去の知らせを受け、今も信じられない思いでおります。あの明るい笑顔がもう見られないかと思うと、悲しみで胸が張り裂けそうです。安らかなお眠りをお祈りいたします。
- つい最近会ったばかりの友人へ先日、お会いした時の元気な姿が目に浮かび、〇〇様の訃報がどうしても信じられません。ご家族の皆様の心中を拝察し、お慰めの言葉もございません。謹んでお悔やみ申し上げます。
- 思い出に触れつつ〇〇様の突然のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。いつも周りを明るくしてくれたあなたの笑顔を、私達は決して忘れません。どうぞ安らかにお眠りください。
- ご遺族を気遣う言葉を添えて突然の悲報に接し、心からお悔やみ申し上げます。ご家族の皆様におかれましても、さぞご心痛のことと存じます。どうかご無理なさらないでください。〇〇様のご冥福を心よりお祈りいたします。
【学生時代の友人へ】青春の思い出を偲ぶ文例 (5選)
共に過ごした学生時代のかけがえのない思い出に触れ、故人を偲びます。
- 共に学んだ日々を偲ぶ〇〇様のご逝去の報に接し、学生時代の思い出が昨日のことのように思い出されます。共に学び、語り合った日々は私の宝物です。今はただ、安らかな旅立ちでありますよう、心からお祈りいたします。
- 部活動の仲間へご逝去の報に接し、呆然としております。グラウンドで汗を流した日々、試合の後に分かち合った喜びも悔しさも、すべてが大切な思い出です。たくさんの感動をありがとう。心よりご冥福をお祈りいたします。
- 楽しかった思い出を中心に〇〇さんの訃報に、言葉が見つかりません。くだらないことで笑い転げた放課後、いつもみんなの中心にいたあなたの笑顔が忘れられません。どうか安らかにお眠りください。ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
- 卒業後も続いた友情へ学生時代から変わらぬ友情を育んでくれた〇〇様。突然のお別れが本当に残念でなりません。今はただ、在りし日のお姿を偲び、安らかなるご冥福を心よりお祈り申し上げます。
- 恩師のような友人へ〇〇様には、学生時代から多くのことを教えていただきました。あなたの言葉に何度励まされたか分かりません。今は感謝の気持ちでいっぱいです。謹んで哀悼の意を表します。
【職場の同僚・友人へ】共に過ごした日々を感謝する文例 (5選)
仕事仲間として、友人として、共に過ごした時間への感謝を伝えます。
- 入社同期の友人へ〇〇さんのご逝去の報に、ただただ言葉を失っております。入社以来、同期として励まし合い、時にはぶつかり合った日々が懐かしく思い出されます。あなたのいない職場を思うと寂しい限りです。心からご冥福をお祈りいたします。
- 仕事での貢献を称える〇〇様の生前のご功績を偲び、そのご逝去を悼みます。仕事に対する真摯な姿勢と、周囲への温かい心遣いは、私達の大きな支えでした。本当にありがとうございました。安らかなお眠りをお祈り申し上げます。
- プロジェクトを共にした仲間へ〇〇さんと共にプロジェクトを乗り越えたこと、決して忘れません。あなたの熱意とリーダーシップがあったからこそ、私達は前進できました。今はただ、安らかにお眠りください。ご遺族の皆様に、心よりお悔やみ申し上げます。
- 退職・転職した元同僚へご逝去の知らせに驚き、言葉もありません。会社は変われど、時折交わす言葉にいつも元気をもらっていました。在りし日のお元気な姿を偲び、謹んで哀悼の意を表します。
- 上司・先輩であった友人へ〇〇様には、公私にわたり大変お世話になりました。厳しさの中に優しさあふれるご指導に、心から感謝しております。今はただ、安らかなることをお祈り申し上げるばかりです。
【趣味の仲間へ】共通の楽しみを懐かしむ文例 (5選)
共通の趣味を通じて深まった絆と、楽しかった時間を偲びます。
- スポーツ仲間へ〇〇様の訃報に接し、悲しい気持ちでいっぱいです。共に汗を流したコートでの、あなたの溌剌とした姿が目に浮かびます。もう一緒にプレーできないと思うと、寂しくてなりません。心よりご冥福をお祈りいたします。
- 音楽・バンド仲間へ〇〇さんの奏でる音色が、今も耳に残っています。スタジオで何度も音を合わせた時間、ステージで一体となったあの瞬間は、一生の宝物です。素晴らしい時間をありがとう。安らかに。
- 旅行仲間へ〇〇様と旅した各地の風景が、昨日のことのように思い出されます。あなたの笑顔があったから、どんな旅も最高の思い出になりました。またいつか、一緒に旅ができると信じていただけに、残念でなりません。謹んでお悔やみ申し上げます。
- 釣り・アウトドア仲間へ雄大な自然の中で、〇〇様と過ごした時間は何物にも代えがたいものでした。あなたの知識と経験にいつも助けられていました。今はただ、安らかな眠りにつかれますよう、お祈りいたします。
- 文化活動の仲間へ〇〇さんの優しい笑顔と、作品に向かう真剣な眼差しを忘れることはできません。共に創作活動に励んだ日々を偲び、謹んで哀悼の意を表します。
【しばらく会えていなかった友人へ】再会を願っていた気持ちを伝える文例 (5選)
会えない時間が長くとも、変わらない友情と、再会を願っていた気持ちを伝えます。
- 再会を約束していた友人へ〇〇様のご逝去の報、あまりに突然のことで言葉が見つかりません。「また近いうちに会おう」と話していた矢先のことで、悔しい思いでいっぱいです。今はただ、安らかなお眠りをお祈りするばかりです。
- 遠方に住む友人へ〇〇さんのご逝去を知り、遠い空の下、悲しみに暮れております。すぐに駆けつけることができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。在りし日の笑顔を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。
- 旧友へのメッセージご無沙汰しておりましたのに、このような形で〇〇様と再会することになり、胸が張り裂けそうです。思い出されるのは、楽しかったあの頃ばかりです。どうか安らかにお眠りください。
- 近況を気遣いつつ〇〇様の訃報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。お元気でいらっしゃるとばかり思っておりましたので、残念でなりません。ご遺族の皆様のご心痛いかばかりかとお察しいたします。
- 感謝の気持ちを込めてしばらく会えなくても、〇〇さんが世界のどこかで頑張っていると思うだけで、私も頑張れました。たくさんの勇気をありがとう。今はただ、安らかなることを心からお祈りいたします。
【友人のご家族へ】遺された家族を気遣う文例 (5選)
友人のご家族が喪主の場合、故人との関係性を伝えつつ、ご遺族への深いいたわりの言葉を添えます。
- 友人の配偶者(喪主)へご主人様(奥様)の〇〇様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。学生時代からの友人として、本当に寂しい思いでいっぱいです。ご家族の皆様のお悲しみもいかばかりかと存じますが、どうぞご自愛ください。
- 友人のご両親(喪主)へご子息様(ご令嬢様)の〇〇様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。〇〇様とは学生時代、いつも一緒に過ごしたかけがえのない友人でした。ご両親様のお悲しみ、お察しするに余りあります。心よりご冥福をお祈りいたします。
- 子どもを持つ友人へ(その配偶者が喪主の場合)〇〇様のご逝去に、今はただ呆然としております。お子様方のことを思うと、胸が締め付けられるようです。微力ながら、何かできることがあればいつでもお声がけください。〇〇様の安らかな旅立ちを心よりお祈り申し上げます。
- ご家族ぐるみで親交があった場合突然の悲報に、家族一同、言葉を失っております。生前、ご家族皆様で仲良くされていたお姿を思うと、お慰めの言葉もございません。今はただ、〇〇様が安らかに眠られますようお祈りするばかりです。
- 参列できないお詫びを丁寧に〇〇様の訃報に接し、心から哀悼の意を表します。本来であればすぐにでも駆けつけ、お見送りをさせていただきたいところですが、やむを得ぬ事情により叶わず、誠に申し訳ございません。遠方より、〇〇様の安らかなることをお祈りしております。
葬儀のプロが教える!弔電に関するQ&A
最後に、弔電に関してよく寄せられる質問にお答えします。いざという時に慌てないよう、ぜひ参考にしてください。
- Q1. 連名で送る場合、名前の順番はどうすればいいですか?
- A1. 職位や年齢が上の方から順に右から記載するのが一般的です。友人同士であれば、特に順番に決まりはありませんが、五十音順にすると分かりやすいでしょう。人数が多い場合は「〇〇一同」とし、別紙に全員の氏名を記載して添える方法もあります。
- Q2. 葬儀に間に合わなかった場合はどうすればいいですか?
- A2. 葬儀後に弔電を送るのは避けましょう。ご遺族が落ち着かれた頃を見計らって、お悔やみの手紙(後日電報)を送るか、事前に連絡の上でご自宅へ弔問に伺うのが丁寧な方法です。香典を現金書留で送る際に、お悔やみの手紙を添えるのも良いでしょう。
- Q3. 喪主の名前が分かりません。
- A3. 訃報の連絡を受けた際に確認するのが一番確実です。それが難しい場合は、葬儀社に問い合わせれば教えてもらえることがあります。それでも分からない場合は、宛名を「(故人様名) ご遺族様」として送ります。
- Q4. キリスト教や神式の葬儀でも弔電を送っていいですか?
- A4. はい、問題ありません。ただし、文面には注意が必要です。仏教用語である「冥福」「成仏」「供養」といった言葉は使わず、「安らかなお眠りをお祈りいたします」(キリスト教・神式共通)、「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」(神式)、「神の御許で安らかに憩われますようお祈りいたします」(キリスト教)といった表現を使います。
- Q5. 弔電と香典、両方送るべきですか?
- A5. 弔電は「お悔やみの言葉を伝えるもの」、香典は「お香やお花の代わりにお供えするもの」であり、役割が異なります。親しい間柄であれば、両方をお送りするのがより丁寧な弔意の表し方と言えます。ただし、ご遺族が香典を辞退されている場合は、弔電のみを送るようにしましょう。
まとめ:大切なのは、故人を偲び、遺族を想う心
この記事では、友人へ送る弔電の基本マナーから具体的な文例まで、詳しく解説してきました。
弔電を送る際に最も大切なのは、**故人を偲び、残されたご遺族の悲しみに寄り添う「心」**です。マナーは、その大切な気持ちを相手に正しく伝えるための作法にすぎません。
今回ご紹介した文例はあくまで一例です。ぜひ、あなた自身の言葉で、故人との大切な思い出や感謝の気持ちを添えてみてください。その一言が、ご遺族にとっては何よりの慰めとなり、故人にとっても喜ばしい最後の贈り物となるはずです。
突然の別れは、誰にとっても辛く、悲しいものです。この記事が、あなたの温かい想いを大切な方へ届ける一助となれば、これに勝る喜びはありません。