【完全ガイド】故人のGoogleアカウントのデジタル遺産相続手続き|ご遺族がすべきことの全知識


ご家族や大切な方が亡くなられた皆様へ、心よりお悔やみ申し上げます。

深い悲しみの中、現実の手続きに追われ、心身ともにお疲れのことと存じます。

近年、私たちの生活に深く根差しているGoogleアカウント。故人様が利用されていたGmailやGoogleフォト、Googleドライブなどには、大切な思い出や重要なデータが数多く残されていることでしょう。これらは「デジタル遺産」と呼ばれ、ご遺族が向き合わなければならない新しい課題の一つとなっています。

「故人のGoogleアカウントはどうすればいいのだろう?」

「パスワードが分からなくても、写真データを取り出すことはできる?」

「不正利用されないか心配…」

このような不安を抱えて、この記事に辿り着かれたのではないでしょうか。

ご安心ください。この記事では、故人様のGoogleアカウントに関する手続きの全てを、一つひとつ丁寧に、分かりやすく解説していきます。長年にわたり、多くのご遺族に寄り添ってきた私たちだからこそお伝えできる視点を交えながら、皆様の不安を少しでも和らげるお手伝いができれば幸いです。

この記事を最後までお読みいただければ、「何を」「いつまでに」「どうすればよいか」が明確になり、落ち着いて手続きを進めることができるはずです。

さあ、ご一緒に、一歩ずつ確認してまいりましょう。

まずは全体像を把握しましょう:故人のGoogleアカウント手続きの流れ

故人様のGoogleアカウントに関するご遺族の手続きは、大きく分けて2つの選択肢があります。

  1. アカウントのデータを取得する:故人様のGoogleフォトの写真やGmailのやり取りなど、データを手元に残したい場合。
  2. アカウントを閉鎖(削除)する:データを引き継がず、アカウントを完全に削除してほしい場合。

どちらの手続きを選ぶかによって、必要な手順が異なります。まずは、故人様のアカウントをどうしたいのか、ご家族で話し合われることが大切です。

多くの方がつまずきやすいポイントとして、**「故人様のスマートフォンやパソコンのロックが解除できず、Googleのパスワードもわからない」**という状況が挙げられます。しかし、そのような場合でも、ご遺族が正式な手続きを踏むことで、Googleにアカウントの開示や閉鎖をリクエストすることが可能です。決して諦める必要はございません。

手続きの全体的な流れは以下のようになります。

  1. 方針を決める:アカウントの「データを取得する」か、「閉鎖(削除)する」かを決める。
  2. 生前の設定を確認する:故人様が「アカウント無効化管理ツール」を設定していたかを確認する。(後ほど詳しく解説します)
  3. 必要書類を準備する:ご自身と故人様との関係を証明する書類などを準備する。
  4. Googleにリクエストを送信する:専用のウェブフォームから申請を行う。
  5. Googleからの連絡を待つ:審査が行われ、結果がメールで通知される。

手続きには、早くても数週間、場合によっては数ヶ月を要することもあります。他の相続手続きも多く、お忙しいことと存じますが、ご自身の心と体を大切にしながら、少しずつ進めていきましょう。

生前の対策が鍵:「アカウント無効化管理ツール」を確認しましょう

ご遺族による手続きを解説する前に、非常に重要な「アカウント無効化管理ツール」についてご説明します。これは、Googleアカウントの持ち主が、生前のうちに「万が一の事態」に備えて設定できる機能です。

アカウント無効化管理ツールとは?

一定期間アカウントの利用がない場合に、事前に指定した信頼できる連絡先(ご家族など)に通知したり、データを共有したり、あるいはアカウントを自動的に削除したりするよう設定できる仕組みです。

もし、故人様がこのツールを設定し、あなたのことを「信頼できる連絡先」として指定してくれていた場合、手続きは非常にスムーズに進みます。故人様が設定した期間(例:3ヶ月間利用がない場合など)が経過すると、あなたの元にGoogleから通知のメールが届きます。そのメールの案内に従うことで、データのダウンロードなどが可能になります。

【ご遺族ができること】

まずは、ご自身のメールボックスに、Googleから「(故人様の氏名)さんが Google アカウントのデータの共有を希望しています」といった件名のメールが届いていないか、確認してみてください。

このツールは、残されたご家族の負担を大きく軽減するものです。この記事を読んでくださっている皆様ご自身の「終活」の一環として、ご自身のGoogleアカウントでこの設定を済ませておくことを強くお勧めします。

出典情報

  • Googleアカウント ヘルプ:アカウント無効化管理ツールについてhttps://support.google.com/accounts/answer/3036546

【選択肢1】故人のアカウントからデータを取得する:思い出の写真やメールを残したい場合

故人様のGoogleフォトに保存されている家族写真や、大切な方とのメールのやり取りは、ご遺族にとって何物にも代えがたい宝物です。Googleでは、法的な手続きを踏むことで、ご遺族が故人のアカウントからデータを取得する道筋を用意しています。

この手続きでできること

  • 故人様のGmail、Googleドライブ、Googleフォトなどに保存されているデータのコピーをダウンロードできます。
  • 注意点: アカウントへのログイン権限(パスワードなど)が開示されるわけではありません。あくまで、データのコピーを受け取ることができる手続きです。

手続きの具体的な手順

データを取得するための手続きは、慎重さと正確性が求められます。以下の手順に沿って、落ち着いて進めていきましょう。

手順1:リクエストフォームへアクセスする

まずは、Googleが用意している専用のリクエストフォームにアクセスします。

リクエストフォーム

  • 亡くなったユーザーのアカウントからデータを取得するhttps://support.google.com/accounts/troubleshooter/6357590?hl=ja

手順2:必要事項を入力する

フォームの案内に従い、以下の情報を正確に入力していきます。

  • ご自身の情報:氏名、連絡先メールアドレス
  • 故人様の情報:氏名、Gmailアドレスなど
  • リクエストの内容:アカウントからのデータ取得を希望する旨を選択します。

手順3:必要書類をアップロードする

ご自身が正当な権利者(近親者や遺言執行者)であることを証明するために、以下の書類のスキャンデータ(または鮮明な写真データ)をアップロードする必要があります。

【必要書類リスト】

書類の種類具体例補足・注意点
ご自身の政府発行の身分証明書運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きで、有効期限内のものをご用意ください。
故人様の死亡証明書死亡診断書のコピー、戸籍謄本(除籍謄本)など故人様が亡くなられたことを公的に証明する書類です。
法的権限を証明する書類(必要な場合)米国の裁判所命令の翻訳版と原文基本的には、米国の裁判所が発行した命令書が求められます。これは、手続きのハードルが高い要因の一つです。まずは上記2点の書類でリクエストを行い、Googleからの追加指示を待つのが現実的です。
故人様からのメールのヘッダー情報(推奨)故人様から過去に受信したメールのヘッダー情報を提出すると、本人確認がスムーズに進む場合があります。必須ではありませんが、もしあれば準備しましょう。

多くの方が不安に思われる点

「米国の裁判所命令」という部分に、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。Googleは米国に本社を置く企業であるため、このような記載があります。しかし、過去の事例では、日本の公的書類(戸籍謄本で関係性を示すなど)で対応できたケースも報告されています。

まずは、ご自身の身分証明書故人様の死亡証明書を準備し、リクエストを送信してみることが第一歩です。Google側で審査が行われ、追加で書類が必要な場合は、連絡先のメールアドレスに指示が届きます。

私たちからのアドバイス

書類の準備は、ご遺族にとって精神的にも時間的にも負担が大きいものです。特に、戸籍謄本などは取得に時間がかかることもございます。葬儀後の様々な手続きと並行して、少しずつご準備を進めてください。もし、手続きの中でご不明な点があれば、一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方にご相談なさってください。

手順4:リクエストを送信し、Googleからの連絡を待つ

全ての入力とアップロードが完了したら、リクエストを送信します。その後、Googleによる審査が開始されます。審査には時間がかかりますので、焦らずに連絡を待ちましょう。承認された場合、登録したメールアドレスにデータのダウンロード方法に関する案内が届きます。

データのダウンロード方法:「Google テイクアウト」

Googleからの許可が下りると、「Google テイクアウト」というツールを使って、故人様のデータを一括でダウンロードできるようになります。

Google テイクアウトとは?

ご自身のGoogleアカウントに保存されているデータを、まとめてダウンロード(エクスポート)できるGoogleの公式ツールです。写真、メール、連絡先、カレンダーの予定など、様々なデータを選択して取り出すことができます。

ご遺族へのデータ開示が承認された場合、このGoogle テイクアウトへの特別なアクセスリンクが提供される形となります。

出典情報

  • Google テイクアウトhttps://takeout.google.com/

【選択肢2】故人のアカウントを閉鎖する:不正利用を防ぎ、情報を整理したい場合

「故人のアカウントを第三者に不正利用されるのが心配」「個人情報が残ったままなのは避けたい」といったお考えから、アカウントの完全な閉鎖(削除)を希望されるご遺族も多くいらっしゃいます。

この手続きでできること

  • 故人様のGoogleアカウントと、それに紐づく全てのデータ(Gmail、フォト、ドライブなど)を完全に削除できます。
  • 注意点: 一度閉鎖したアカウントは、二度と復元できません。大切なデータが残っていないか、閉鎖をリクエストする前によくご確認ください。

手続きの具体的な手順

アカウントの閉鎖手続きも、データ取得と同様に、専用のフォームからリクエストを行います。

手順1:リクエストフォームへアクセスする

データ取得とは別の、アカウント閉鎖専用のフォームにアクセスします。

リクエストフォーム

  • 亡くなったユーザーのアカウントの閉鎖をリクエストする(上記のデータ取得と同じフォーム https://support.google.com/accounts/troubleshooter/6357590?hl=ja の中で、「亡くなったユーザーのアカウントの閉鎖」を選択します)

手順2:必要事項を入力し、必要書類をアップロードする

基本的な流れはデータ取得の場合と同じです。ご自身の情報、故人様の情報を入力し、以下の書類のスキャンデータをアップロードします。

【必要書類リスト】

書類の種類具体例補足・注意点
ご自身の政府発行の身分証明書運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きで、有効期限内のものをご用意ください。
故人様の死亡証明書死亡診断書のコピー、戸籍謄本(除籍謄本)など故人様が亡くなられたことを公的に証明する書類です。

アカウントの閉鎖リクエストの場合、データ取得リクエストよりも必要書類が少なく、手続きのハードルは比較的低いとされています。

手順3:リクエストを送信し、Googleからの連絡を待つ

リクエスト送信後、Googleによる審査が行われます。承認されると、アカウントが閉鎖処理され、その旨が通知されます。

私たちからのアドバイス

故人様のアカウントが、何らかのオンラインサービスの支払いや重要な連絡に使われている可能性もございます。例えば、有料のサブスクリプションサービスに登録している場合、アカウントを閉鎖する前に、それらのサービスを解約しておく必要があります。ご記憶の範囲で結構ですので、故人様がどのようなサービスを利用されていたか、一度思い返してみることをお勧めします。


ご遺族が抱えやすい疑問にお答えします(Q&A)

ここでは、デジタル遺産の手続きに関して、ご遺族からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

Q1. 故人のGoogleアカウントのパスワードが分かりません。リセットしてもいいですか?

A1. パスワードが分からない場合、安易にパスワードリセットを試みることはお勧めしません。

パスワードリセットを試みると、故人様のスマートフォンなどに確認コードが送信されることが多く、そのロックが解除できなければ、結局手続きを進めることができません。最悪の場合、不正アクセスとみなされアカウントがロックされてしまう可能性もあります。

まずはこの記事でご紹介した、ご遺族向けの公式な手続き(データの取得またはアカウントの閉鎖)を進めるようにしてください。

Q2. 手続きにはどのくらいの費用がかかりますか?

A2. Googleへのリクエスト手続き自体に費用はかかりません。無料です。

ただし、戸籍謄本や死亡証明書といった公的な書類を取得するための実費は、ご自身でご負担いただく必要があります。

Q3. 弁護士や行政書士に手続きを代行してもらうことはできますか?

A3. はい、可能です。

デジタル遺産に詳しい弁護士や行政書士などの専門家に依頼し、手続きを代行してもらうことも選択肢の一つです。特に、他の相続手続きも多く、ご自身で対応する時間的・精神的な余裕がない場合や、Googleとのやり取りに不安を感じる場合には、専門家への相談を検討されるとよいでしょう。

Q4. YouTubeアカウントも削除されますか?

A4. はい、削除されます。

故人様が動画を投稿していたYouTubeチャンネルや、Google Playで購入した映画やアプリなども、Googleアカウントに紐づけられています。アカウントを閉鎖すると、これらのサービスに関連する全てのデータや権利も失われることになりますので、ご注意ください。

Q5. 手続きにはどれくらいの時間がかかりますか?

A5. ケースバイケースですが、一般的に数週間から数ヶ月かかると言われています。

提出された書類の確認や、法的な要件の審査に時間を要するためです。Googleからの連絡を待つ間は、不安に思われるかもしれませんが、必要な手続きは済ませていると信じて、他のやるべきことに集中しましょう。


まとめ:故人を偲ぶ時間を大切にするために

この記事では、故人様のGoogleアカウントという「デジタル遺産」について、ご遺族が行うべき手続きを詳しく解説してまいりました。

最後に、手続き全体のチェックリストをご用意しましたので、ご活用ください。

【Googleデジタル遺産 手続きチェックリスト】

チェック項目完了備考
方針の決定ご家族で話し合い、「データ取得」か「アカウント閉鎖」かを決める。
生前設定の確認Googleから「アカウント無効化管理ツール」に関するメールが届いていないか確認する。
必要書類の準備ご自身の身分証明書、故人様の死亡証明書などを準備する。
リクエストの送信Googleの専用フォームから、必要事項を入力し書類をアップロードして送信する。
Googleからの連絡を待つ審査結果の連絡がメールで届くのを待つ。(数週間~数ヶ月)
(データ取得の場合)データのダウンロード届いた案内に従い、「Google テイクアウト」でデータを保存する。

大切な方を亡くされた直後は、やらなければならない手続きの多さに、心が押しつぶされそうになることもあるかと存じます。しかし、一つひとつを丁寧に進めていけば、必ず終わりは見えてきます。

デジタル遺産の手続きは、故人様が生きてきた証と向き合い、その思い出を大切に整理するための時間でもあります。どうかご自身を責めたり、追い詰めたりすることなく、ご自身のペースで進めてください。

私たち「TERASU by 玉泉院」は、これからも皆様の心に寄り添い、終活やご葬儀に関するあらゆる不安を照らす存在でありたいと願っています。この記事が、皆様の心の負担を少しでも軽くする一助となれば、これに勝る喜びはございません。

もし、他にもお困りのことや、ご葬儀後の手続きでご不明な点がございましたら、いつでも私たちにご相談ください。皆様が一日も早く、穏やかな日常を取り戻せるよう、心よりお祈り申し上げます。