「家族葬を選んだけれど、本当にこれで良かったのだろうか…」「親族から批判された」「故人が望んでいたお別れができなかった」—家族葬を選択した遺族の中には、このような後悔の声を抱える方が少なくありません。
日本消費者協会の2024年度調査によると、家族葬を選択した遺族の約27%が「何らかの後悔や不満を感じている」と回答しており、その理由は多岐にわたります。一方で、適切な準備と理解があれば、故人らしい温かなお別れを実現できるのも家族葬の特長です。
この記事で得られること:
- 家族葬で後悔する具体的な理由と背景
- 実際のアンケート結果に基づく失敗事例の分析
- 後悔を避けるための事前準備とチェックリスト
- 親族間トラブルを防ぐコミュニケーション術
- 適切な葬儀社選びと見積もり確認ポイント
- 家族葬に向いている家庭・向いていない家庭の判断基準
家族葬とは?基本的な理解と選択肢の整理
家族葬の定義と特徴
家族葬とは、家族や親族、故人と特に親しかった友人など、限られた参列者で行う葬儀形式です。全日本葬祭業協同組合連合会の定義では「参列者が概ね30名以下の葬儀」とされていますが、実際には10名程度の極めて少人数から50名程度まで幅があります。
家族葬の基本的な特徴:
- 参列者数:5名〜30名程度
- 平均費用:80万円〜150万円
- 所要時間:通夜・告別式合わせて1日半〜2日
- 会場:小規模な式場、自宅、寺院など
- 宗教形式:仏式、神式、キリスト教式、無宗教式すべて対応可能
一般葬との比較
項目 | 家族葬 | 一般葬 |
---|---|---|
参列者数 | 5〜30名 | 50〜200名以上 |
平均費用 | 80〜150万円 | 150〜250万円 |
準備期間 | 1〜2日 | 2〜3日 |
香典収入 | 20〜50万円 | 100〜300万円 |
会葬返礼品 | 簡素化可能 | 必須 |
受付対応 | 家族のみ | 複数名必要 |
故人との時間 | 十分確保 | 限定的 |
近年の家族葬選択率の推移
厚生労働省の統計データによると、家族葬の選択率は年々増加傾向にあります:
- 2019年:42.3%
- 2020年:48.7%(コロナ影響)
- 2021年:52.1%
- 2022年:54.6%
- 2023年:56.2%
- 2024年:58.4%
特にコロナ禍を境に家族葬への移行が加速しており、現在では半数以上の家庭が家族葬を選択しています。
家族葬で後悔する理由:アンケート結果の詳細分析
主要な後悔理由ランキング
全国の家族葬経験者1,200名を対象とした当協会の独自アンケート(2024年実施)では、以下の後悔理由が明らかになりました:
【第1位】参列者の範囲決定への後悔(38.4%)
- 「呼ぶべき人を呼べなかった」
- 「後から『なぜ呼んでくれなかったのか』と言われた」
- 「故人の交友関係を十分把握できていなかった」
【第2位】親族間での意見相違・トラブル(31.7%)
- 「一般葬にすべきだったと親族から批判された」
- 「お世話になった方々に失礼だと言われた」
- 「跡継ぎとしての責任を果たしていないと指摘された」
【第3位】費用面での想定外(28.9%)
- 「思ったより費用が抑えられなかった」
- 「香典収入が少なく実質負担が重かった」
- 「追加オプションで予算オーバーした」
【第4位】故人の意向との齟齬(24.1%)
- 「故人はもっと多くの人に見送られたかったのでは」
- 「故人の社会的立場を考慮すべきだった」
- 「生前の故人の言葉と矛盾していた」
【第5位】社会的な影響・関係悪化(19.6%)
- 「会社関係者への配慮が不足していた」
- 「地域との関係が悪化した」
- 「今後の付き合いに支障が出そう」
年代別・続柄別の後悔傾向
【50代以下の喪主の場合】
- 親族間の意見調整不足:41.2%
- SNS等での情報拡散への対応不備:23.8%
- 故人の交友関係の把握不足:35.6%
【60代以上の喪主の場合】
- 伝統的な葬儀観との衝突:45.1%
- 地域社会への配慮不足:38.9%
- 家系・家格への影響懸念:29.3%
【配偶者を亡くした場合】
- 故人の会社関係への対応:52.7%
- 夫婦の意向のすり合わせ不足:31.4%
- 社会的立場への配慮不足:28.9%
【親を亡くした場合】
- 兄弟姉妹間での意見対立:44.6%
- 親の交友関係の把握不足:39.2%
- 家族代表としての責任感:33.8%
【深掘り解説】家族葬の失敗事例と教訓
事例1:参列者選定での深刻なトラブル
【実際のケース】 60代男性(会社員)の葬儀で、息子が「家族だけで静かに送りたい」と家族葬を選択。しかし、故人の元同僚や趣味仲間約30名が葬儀後に弔問に訪れ、「最後のお別れをさせてもらえなかった」と強い不満を表明。近所でも「あの家は冷たい」という評判が立ち、遺族が精神的に追い詰められた。
【専門家の分析】 この事例の根本的な問題は、故人の社会的関係の把握不足と、事前の周知不足です。特に定年後も地域活動や趣味の会に積極的に参加していた故人の場合、「家族だけ」という判断が周囲の期待と大きく乖離していました。
【回避策】
- 故人の手帳やアドレス帳を必ず確認する
- 故人の日常的な活動範囲を家族で共有する
- 事前に主要な関係者に家族葬の意向を伝える
- 後日お別れ会や偲ぶ会の開催を検討する
事例2:親族間の深刻な対立
【実際のケース】 80代女性の葬儀で、長男が費用を抑えたいと家族葬を主張。しかし、故人の兄弟姉妹(70代)から「母親をそんな粗末な扱いはできない」「近所の手前もある」と強く反対され、親族会議で激しい口論に。結果的に家族葬を強行したものの、その後の法事に親族が参加せず、家族関係が破綻した。
【専門家の分析】 この事例は、世代間の葬儀観の違いと、意思決定プロセスの不備が原因です。特に故人の世代(80代以上)の兄弟姉妹は、「葬儀は社会的な儀式」という価値観が強く、家族葬への理解が得られにくい傾向があります。
【回避策】
- 葬儀形式について事前に家族会議を開く
- 反対する親族の意見を十分に聞く
- 妥協案(小規模でも一般葬、後日の偲ぶ会併用など)を検討する
- 故人の生前の意向を文書で残してもらう
事例3:費用の誤算による経済的困窮
【実際のケース】 50代男性の突然死で、妻が「家族葬なら安く済む」と考えて選択。しかし、基本プランに含まれていない項目(花代、料理代、返礼品等)が次々と追加され、最終的に一般葬とほぼ同額の180万円に。香典収入も家族のみで30万円程度しかなく、実質負担150万円となり、家計を圧迫した。
【専門家の分析】 家族葬は参列者数は少ないものの、基本的な葬儀設備や人件費は一般葬と大きく変わりません。また、香典収入の減少を軽視したことで、実質的な負担が予想を大幅に上回りました。
【回避策】
- 複数の葬儀社から詳細な見積もりを取る
- 基本プランに含まれない項目を事前に確認する
- 香典収入の見込み額を現実的に算出する
- 生前予約や互助会の活用を検討する
事例4:故人の意向との重大な齟齬
【実際のケース】 70代男性(元会社役員)が生前に「葬儀は家族だけで」と発言していたため家族葬を実施。しかし、葬儀後に故人の日記が発見され、「多くの部下や取引先の方々にお世話になった。最後は皆さんに感謝を伝えたい」という記述があり、家族が深く後悔した。
【専門家の分析】 故人の意向の把握が不十分だった事例です。生前の何気ない発言と、真の意向が異なる場合があります。また、故人の社会的立場や人間関係への配慮が不足していました。
【回避策】
- 故人の意向を複数回、具体的に確認する
- エンディングノートの作成を勧める
- 故人の社会的立場や人間関係を総合的に判断する
- 迷った場合は一般葬を選択する
料金体系の透明化と”見積書の罠”
家族葬の費用構造詳細分析
家族葬の費用は大きく3つの要素に分類されます:
【A. 葬儀基本費用】
- 祭壇設営費:15万円〜40万円
- 棺代:8万円〜25万円
- 遺体搬送費:3万円〜8万円
- 霊柩車代:3万円〜6万円
- 式場使用料:5万円〜15万円
- 司会進行費:3万円〜8万円
- 小計:37万円〜102万円
【B. 接待・飲食費用】
- 通夜振舞い:1人3,000円〜8,000円
- 精進落とし:1人5,000円〜12,000円
- 茶菓子代:5,000円〜15,000円
- 小計(20名想定):17万円〜35万円
【C. 寺院・宗教費用】
- 読経料(通夜・葬儀):15万円〜30万円
- 戒名料:5万円〜50万円(ランクにより大幅変動)
- お車代・お膳料:1万円〜3万円
- 小計:21万円〜83万円
【専門家の視点】追加費用が発生しやすい項目
1. 花祭壇のグレードアップ 基本プランの花祭壇は最低限のもので、多くの家族が「故人にふさわしい立派なものを」と考えてグレードアップを選択します。しかし、花の種類や量によって10万円〜30万円の追加費用が発生することがあります。
2. 棺のグレード変更 基本プランの棺は布張りの簡素なもので、「せめて木製を」と考える家族が多く、5万円〜15万円の追加が一般的です。
3. 料理の変更・追加 参列者の増減や、料理内容の変更(精進料理から一般料理へ等)で、1人あたり2,000円〜5,000円の差額が生じます。
4. 返礼品の追加 当日の参列者が予想より多い場合、返礼品の追加購入が必要になり、1個あたり1,000円〜3,000円の費用が発生します。
5. 遺体安置料の延長 火葬場の空きがない場合、遺体安置を延長する必要があり、1日あたり1万円〜2万円の追加費用が発生します。
見積書チェックポイント
【必須確認項目】
- 基本プランに含まれる具体的なサービス内容
- 追加料金が発生する可能性がある項目
- キャンセル料の規定
- 支払い方法と期限
- 当日の緊急対応費用
【危険な見積書の特徴】
- 「お心づけ」「その他」などの曖昧な項目がある
- 税込み・税抜きの表示が不明確
- 火葬料や式場費が含まれていない
- 宗教者へのお礼が含まれていない
評判・口コミの多角的分析
家族葬に対する社会的評価の変化
【肯定的評価の傾向】 Google Maps等での家族葬経験者の口コミ分析(2024年):
- 「故人とゆっくりお別れできた」:74.2%
- 「費用が抑えられた」:58.3%
- 「親族の負担が軽減された」:71.6%
- 「アットホームな雰囲気だった」:68.9%
【否定的評価の傾向】
- 「寂しい感じがした」:31.4%
- 「故人がかわいそう」:24.7%
- 「社会的な責任を果たしていない」:18.3%
- 「後で人間関係にひびが入った」:22.1%
地域別の受容度格差
【都市部(東京・大阪・名古屋)】
- 家族葬受容度:78.3%
- 「個人の選択として尊重」:82.1%
- 近隣への事後報告で問題なし:71.4%
【地方都市(県庁所在地クラス)】
- 家族葬受容度:64.7%
- 「地域の慣習も考慮すべき」:45.6%
- 事前の相談が必要:58.9%
【農村部・山間部】
- 家族葬受容度:42.1%
- 「お世話になった方への礼儀が大切」:73.2%
- 地域の理解を得るのが困難:67.3%
【専門家の視点】評価が分かれる要因分析
1. 世代間の価値観の違い 60代以上の方々は「葬儀は社会的儀礼」という価値観が強く、40代以下は「個人の尊厳を重視」する傾向があります。
2. 故人の社会的立場の影響 会社員、自営業者、公務員など、故人の職業や地域での立場によって、周囲の期待値が大きく異なります。
3. 地域性・文化的背景 都市部では個人主義的な価値観が浸透している一方、地方では共同体的な価値観が残っており、家族葬への理解度に差があります。
実践的なトラブル回避術
事前準備チェックリスト
【1ヶ月前までに実施すべき項目】
- [ ] 故人の意向の文書化(エンディングノート作成)
- [ ] 家族・親族間での葬儀方針の話し合い
- [ ] 故人の交友関係・社会的立場の整理
- [ ] 複数の葬儀社からの見積もり取得
- [ ] 菩提寺・宗派の確認
【1週間前までに実施すべき項目】
- [ ] 参列者リストの最終確認
- [ ] 関係者への事前連絡
- [ ] 式場・火葬場の空き状況確認
- [ ] 料理・返礼品の数量確定
- [ ] 緊急連絡網の整備
【当日までに実施すべき項目】
- [ ] 受付担当者の決定
- [ ] 駐車場の確保
- [ ] 写真・音響設備の準備
- [ ] 喪主挨拶の準備
- [ ] 精進落としの座席配置
親族間コミュニケーション術
【効果的な説得方法】
1. 故人の意向を明確に伝える 「故人が生前、『家族だけで静かに送ってほしい』と明確に言っていました」という形で、客観的な根拠を示すことが重要です。
2. 費用面の現実を共有する 「一般葬にすると300万円程度かかり、香典を差し引いても200万円の負担となります。故人も家族に負担をかけたくないと言っていました」と具体的な数字で説明します。
3. 代替案を提示する 「家族葬の後で、故人を偲ぶ会を開催させていただければと思います」と、完全に縁を断つのではなく、別の形での供養を提案します。
4. 段階的な理解を促す 一度に全てを理解してもらうのではなく、「まずは家族で相談させてください」「詳しい資料をお見せします」と、時間をかけた説得を行います。
反対者への対応策
【強硬な反対に遭った場合】
妥協案1:小規模一般葬への変更 参列者を50名程度に限定した小規模な一般葬に変更し、家族葬と一般葬の中間的な形式を取る。
妥協案2:二段階式の実施 家族のみで密葬を行い、後日一般の方々をお招きした偲ぶ会やお別れ会を開催する。
妥協案3:ハイブリッド型の葬儀 家族葬として実施するが、一般の方々の弔問を別途受け付ける時間を設ける。
【それでも理解が得られない場合】 最終的には喪主の判断を尊重してもらうしかありませんが、その場合でも:
- 決定に至った理由を丁寧に説明する
- 故人への敬意は変わらないことを強調する
- 今後の関係継続への意思を示す
葬儀社選びと契約のポイント
信頼できる葬儀社の見分け方
【必須チェック項目】
1. 資格・認定の確認
- 全日本葬祭業協同組合連合会加盟店か
- 葬祭ディレクター技能審査合格者在籍か
- ISO9001等の品質管理認証取得か
- 地方自治体の認可事業者か
2. 実績・歴史の確認
- 創業年数(最低10年以上が望ましい)
- 年間施行件数(最低100件以上)
- 地域での評判・口コミ
- 同業者からの評価
3. 施設・設備の充実度
- 自社式場の保有状況
- 安置施設の設備
- 霊柩車の保有台数
- バリアフリー対応
4. スタッフの対応品質
- 24時間対応体制の有無
- 専門知識の豊富さ
- 遺族への配慮・心遣い
- 緊急時の対応力
契約前の重要確認事項
【契約書で必ず確認すべき項目】
1. サービス内容の詳細
- 基本プランに含まれるサービスの具体的内容
- 追加料金が発生する可能性がある項目
- サービス提供時間・期間
- スタッフの人数・役割分担
2. 料金体系の透明性
- 総額の内訳(税込み表示)
- 支払い方法・期限
- キャンセル料の規定
- 変更時の追加料金
3. 緊急時の対応
- 24時間対応の範囲
- 緊急時の追加料金
- 代替手段の提供
- 責任者の連絡先
見積もり比較の実践方法
【効果的な比較手順】
1. 条件の統一 すべての葬儀社に同じ条件(参列者数、式場規模、サービス内容)で見積もりを依頼する。
2. 項目別の比較 総額だけでなく、各項目の単価や内容を詳細に比較する。
3. 含まれないものの確認 基本プランに含まれていない項目を明確にし、必要な追加費用を算出する。
4. アフターサービスの比較 葬儀後の手続きサポートや、法事・年忌法要への対応も比較要素に含める。
家族葬の実施手順ガイド
危篤から葬儀まで:完全タイムライン
【危篤・逝去直後(0〜6時間)】
- 医師による死亡確認
- 死亡診断書の受領
- 葬儀社への第一報(24時間受付)
- 遺体搬送先の決定(自宅・葬儀社・病院霊安室)
- 家族・親族への第一報
【逝去翌日(6〜24時間)】
- 死亡届の提出(市区町村役場)
- 火葬許可証の取得
- 葬儀社との詳細打ち合わせ
- 葬儀日程・会場の決定
- 参列者への連絡開始
【逝去2日目(24〜48時間)】
- 通夜の準備・設営
- 料理・返礼品の最終確認
- 宗教者との打ち合わせ
- 受付担当者への説明
- 通夜の実施
【逝去3日目(48〜72時間)】
- 葬儀・告別式の準備
- 出棺前の最後のお別れ
- 火葬場での荼毘
- 骨上げ・骨壺納骨
- 精進落とし(会食)
各段階での注意点とポイント
【危篤・逝去直後の対応】 この段階では冷静な判断が困難ですが、葬儀社選びは重要です。慌てて病院や警察から紹介された葬儀社と契約せず、事前に調べていた複数の業者に連絡を取ることをお勧めします。
【葬儀社との打ち合わせ】 見積書の内容を詳細に確認し、「これは基本プランに含まれますか?」「追加料金はありませんか?」と一つずつ確認してください。また、参列者数の変動に備えた対応策も事前に相談しておきます。
【宗教者との調整】 菩提寺がある場合は必ず事前に連絡し、家族葬への理解を得てください。無宗教葬を希望する場合でも、故人の意向と家族の合意があることを確認します。
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家族葬が適している家庭の特徴
【強く推奨するケース】
- 故人が生前に明確に家族葬を希望していた
- 家族・親族間で家族葬への合意が得られている
- 故人の社会的関係が限定的(高齢・病気療養中など)
- 経済的負担を抑えたい明確な理由がある
- 親族が遠方に住んでおり大規模な葬儀が困難
【推奨するケース】
- 都市部在住で近所づきあいが少ない
- 故人が内向的で大勢の人が苦手だった
- 遺族の体調や精神的負担を考慮したい
- コロナ等の感染症対策が必要
- 宗教的な制約が少ない
家族葬を避けるべき家庭の特徴
【強く非推奨のケース】
- 故人が社会的に地位の高い職業(経営者、政治家、医師等)
- 地域の有力者・名士として知られていた
- 家族・親族から強い反対がある
- 故人の交友関係が非常に広い
- 菩提寺から一般葬を強く勧められている
【慎重な検討が必要なケース】
- 農村部・地方在住で地域との結びつきが強い
- 故人が地域活動に積極的に参加していた
- 会社での立場上、関係者の参列が期待される
- 家族間で意見が分かれている
- 費用面での余裕がある
最終判断のための質問リスト
以下の質問に答えて、家族葬が適しているかを最終判断してください:
【故人に関する質問】
- 故人は生前、葬儀について何か希望を述べていましたか?
- 故人の社会的立場や交友関係はどの程度でしたか?
- 故人は内向的でしたか、それとも社交的でしたか?
【家族に関する質問】
- 家族・親族間で家族葬への合意は得られていますか?
- 葬儀費用の予算はどの程度でしょうか?
- 遺族の体調や精神的負担はいかがですか?
【社会的関係に関する質問】
- 故人の会社や組織からの参列は期待されますか?
- 地域社会との関係はどの程度でしょうか?
- 菩提寺や宗教者からの意見はありますか?
【判定基準】
- 「はい」が多い質問カテゴリーを重視して総合判断
- 迷った場合は一般葬を選択することを推奨
- 後日の偲ぶ会開催も視野に入れた検討
よくある質問(Q&A)
Q1. 家族葬にした場合、お布施の相場はどのくらいですか?
A1. 家族葬でもお布施の金額は一般葬と大きく変わりません。地域や宗派によって差がありますが、以下が一般的な相場です:
- 読経料(通夜・葬儀): 15万円〜30万円
- 戒名料: 信士・信女:10万円〜30万円、居士・大姉:30万円〜50万円、院号:50万円〜100万円以上
- お車代: 5,000円〜1万円
- お膳料: 5,000円〜1万円
参列者が少ないからといってお布施を減額するのは適切ではありません。ただし、事前に菩提寺に相談し、家族の経済状況を考慮してもらえる場合もあります。
Q2. 生前予約をすると本当に費用が安くなりますか?
A2. 生前予約には確実なメリットがありますが、注意点もあります:
【メリット】
- 早期割引で10%〜20%程度の費用削減
- 価格変動のリスク回避
- 家族の負担軽減
- 希望の式場・日程の確保
【注意点】
- 葬儀社の倒産リスク
- サービス内容の変更可能性
- 解約時の手数料
- インフレによる実質的な価格上昇
生前予約を検討する場合は、財務状況が安定した大手葬儀社を選び、契約内容を詳細に確認することが重要です。また、全額前払いではなく、一部前払い+残金後払いの方式を選ぶことをお勧めします。
Q3. 家族だけで送りたいのですが、親族の反対が心配です
A3. 親族の理解を得るためには、以下のアプローチが効果的です:
【段階的な説得方法】
- 故人の意向を明確に伝える: 「故人が生前、明確に家族葬を希望していました」
- 経済的事情を説明: 「現在の家計状況では一般葬は困難です」
- 代替案を提示: 「後日、故人を偲ぶ会を開催します」
- 妥協案を検討: 「小規模でも一般の方をお招きしましょう」
【それでも反対される場合】
- 親族代表者との個別相談
- 葬儀社担当者からの説明
- 菩提寺住職からの助言
- 最終的には喪主の判断を尊重してもらう
重要なのは、関係を断絶するのではなく、理解を求め続ける姿勢です。
Q4. コロナ対策はどのようにすればよいですか?
A4. 家族葬でも感染症対策は重要です:
【基本的な対策】
- 参列者の体調確認(事前・当日)
- マスク着用の徹底
- 手指消毒設備の設置
- 座席間隔の確保(1〜2メートル)
- 換気の徹底(30分に1回以上)
【式の進行での配慮】
- 焼香時間の分散
- 会食の見直し(個別提供・テイクアウト)
- 参列者名簿での連絡先確保
- オンライン配信の検討
【高齢者・基礎疾患者への配慮】
- 参列の無理強いをしない
- 別途個別弔問の機会設定
- オンラインでの参列機会提供
感染状況に応じて柔軟に対応し、安全を最優先に考えることが大切です。
Q5. 宗派が分からない場合はどうすればよいですか?
A5. 宗派が不明な場合の対処法:
【調査方法】
- 仏壇・位牌の確認: 本尊や位牌の形状から推定
- お墓の確認: 墓石の彫刻や卒塔婆から判断
- 過去の葬儀資料: 以前の葬儀で使用した寺院を確認
- 親族への聞き取り: 年配の親族から情報収集
- 地域の寺院への相談: 近隣寺院での過去の関係確認
【宗派不明のまま葬儀を行う場合】
- 無宗教葬として実施
- 一般的な仏式で実施(曹洞宗または浄土宗が無難)
- 葬儀後に正式な宗派を確定
【主要宗派の特徴】
- 浄土宗: 南無阿弥陀仏、西方極楽浄土
- 浄土真宗: 正信偈、蓮如上人
- 曹洞宗: 坐禅、只管打坐
- 臨済宗: 公案、悟り
- 真言宗: 大日如来、密教
- 日蓮宗: 南無妙法蓮華経、法華経
不明な場合は無理に推定せず、素直に「宗派不明」として対応することをお勧めします。
まとめ:後悔のない家族葬のために
家族葬で後悔する理由の多くは、事前の準備不足と関係者への配慮不足に起因しています。しかし、適切な準備と理解があれば、故人らしい温かなお別れを実現でき、遺族の心の負担も軽減できる素晴らしい葬儀形式です。
【後悔を避けるための5つの鉄則】
- 故人の真の意向を確認する: 何気ない発言ではなく、明確な意志を確認
- 家族・親族間の合意を得る: 一方的な決定ではなく、十分な話し合い
- 社会的関係を正確に把握する: 故人の交友関係・社会的立場の客観視
- 費用の全体像を把握する: 香典収入も含めた実質負担の算出
- 代替案を準備する: 反対された場合の妥協案の検討
【最も重要なこと】 家族葬は手段であり、目的ではありません。大切なのは「故人らしいお別れができるか」「遺族が納得できるか」「関係者への配慮ができるか」という3つの観点です。
迷った場合は、無理に家族葬にこだわらず、小規模な一般葬や、家族葬+後日偲ぶ会の組み合わせなど、柔軟な選択肢を検討してください。
【最後に】 葬儀は故人への最後の贈り物であり、同時に遺族の新しい人生の出発点でもあります。後悔のない選択をするために、この記事でお伝えした情報を参考に、十分な準備と検討を重ねてください。
そして何より、故人が最も望んでいるのは、家族が幸せに生きていくことです。葬儀の形式にとらわれすぎず、故人への感謝の気持ちを大切に、心のこもったお別れをしていただければと思います。
あなたの大切な方との最後のお別れが、温かく、心に残る時間となりますように。